スイスとイギリス

2016年6月23日 海外

スイスのベーシックインカムにはかなり期待していたが、否決されてしまった。自分がベーシックインカムが欲しいからというわけでなく(くれるならもらうが)、今のような世界的な物価の低さなら、そろそろお金を大盤振る舞いするタイミングだということを言いたかったのだ。

そもそも、物価が低いというのはそれだけ分配が不調であることを意味する。高度経済成長期は企業が国内に投資を行っていたから、大量の借金をしていた。借りたお金で工場を建てたり工作機械を買うと、その受注を受けた企業は従業員に十分な支払いをすることができる。もちろん、テレビや洗濯機といった家電など、今までになかった新しいモノが普及していった時代であり、個人消費も活発だったのだが、それに輪をかけて企業の借金による投資が大きかった。

つまり、人々が手にする給料というのは、個人からの売り上げだけでなく、相当に企業の借金による投資の部分があった。今現在、非正規雇用を中心とした低賃金の蔓延の原因はそこにある。

そういう意味で、20世紀の分配の担い手は企業であったといってもいいかもしれない。分配が好調なら物価は上がる。これは企業だけでなく、政府にも当てはまることで、冒頭のベーシックインカムによせる個人的な期待が大きかったのも、政府による分配が復活する契機になるかもしれないと思ったからだ。

物価というのはそれ自体が重要なのではなく、上昇していることで分配がされているという確認の意味がある。大切なのは分配のほうだ。非正規雇用や老後の破産など経済的困窮にまつわる話はいくらでもある。格差社会などと言われている以上、分配がうまくいっているようには思えない。そして低い物価上昇率とくれば、これは動かぬ証拠と言えるのだ。

スイスは日本と同様に低物価上昇率のマイナス金利国だ。ここでベーシックインカムをキメていれば、相当に他のヨーロッパ諸国に影響を与えることになったかもしれないと思うと残念だ。

イギリスのEU離脱の投票が始まった。イギリス人は難民を問題視しているようで、テロとの絡みもあって理解できる。私個人としては経済的な意味において離脱を奨めたい。

イギリスはEU統合の時にユーロ導入に失敗して、本当はユーロになるはずだったのだができなかったのだ。しかし、それが今では幸いしていると思う。

ユーロとポンドの間には為替レートがあり、もし、ドイツからの輸出攻勢をうけてイギリスの国内産業がやられたとしても、そのうちポンドが安くなってイギリス製品が安く買えるようになる。フランス人もドイツ人も安いならそれに越したことはないわけで、今度はイギリス製品が巻き返しをはかるといったように、通貨が違う2国間というのはバランスをとれるようになっているのだ。おそらく、ポンド安の影響で観光客も増えるだろう。

ポンド安になると輸入物価が上がるので、輸入品の値段が上がることになる。しかし、一方でイギリス国内で生産されるものが安いので、国内の産業が振興することにもなる。

面白くないのはグローバル企業で、イギリスを含めた関税のないEUという巨大な市場を失いたくはない。離脱してしまえば関税を復活させることは明らかだからだ。また、イギリス国内に難民という安い労働力がいるほうが、投資のしがいもある。

ポンド安の影響で世界経済の悪化ばかりが言われるが、実はイギリス人にとっては悪い話ではないのだ。難民をどの程度受け入れるかといったことは、イギリス人自身が決めることだし、雇用もポンド安を利用して輸出企業や観光で確保すればいい。また、輸入物価上昇による国内産業の振興も、賃金の高いネイティブイギリス人にとっては朗報だと言える。

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