マイナス金利は効果はあったか?

9月20日、21日と日銀の金融政策決定会合があった。

今まではガムシャラに緩和を行うというスタンスだったが、今回の会合で短期金利と長期金利があまりにフラットにならないようにする、という決定がなされた。イールドカーブ・コントロールとか難しいことを言い始めた。

2年ものの国債の直近の利回りは-0.24%で10年ものの国債の利回りは-0.1%だ。これを短期は-0.1%にして、長期は0%程度になるようにしたい、ということらしい。

短期と長期ともにマイナス域に入ってはいるものの、それほどフラットでもないような気もするが、日銀としては、これを全体的に少しプラス圏に持っていきたいということだろう。

当座預金のマイナス金利と国債のマイナス金利が、銀行の収益に悪影響を及ぼすという認識が出てきたようだ。日銀の当座預金の一部がマイナス金利になる一方で、預金者の金利はマイナスにすることはできない。その板挟みで銀行は苦しんでいる。

今年の1月末にマイナス金利を導入して8ヶ月が経って、肝心の銀行の貸出は増えたのだろうか?

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上は全国銀行協会のデータで、全国の銀行の貸出実績の前年同月比のグラフになる。棒グラフが銀行全体のもので、折れ線グラフが銀行の形態別の動向になっている。

貸出は全体的には微減している。マイナス金利は効果がなかったようだ。

日銀は貸出金利は下がっていると評価していたが、さすがに貸出額が少し減ったとは言えなかったらしい。

信託銀行が上に伸びており、これは不動産投資向けの融資が劇的に増えたと思われる。対して都市銀行はむしろ下がっており、全体としてはおおきな変化はなしとなった。設備投資関連が減って土地活用の不動産投資向け融資が増えたということは、貸出の中身が悪くなったと言えなくもない。

不動産投資家は、いかに安い金利で借りるかということに命をかけている。少しでも毎月の返済が安ければ、手元に残るキャッシュが増えるからだ。なので、わずかな金利にも不動産投資家は神経を尖らせている。

一方で企業の設備投資はむしろ悪化している。企業は金利が安いから借りるのではなく、必要だから借りるのだ。売り上げが期待できない以上、いくら金利が安いからといっても借りることはない。マイナス金利によって景気の底上げはできずに、変なバブルを招く危険性があるようにも見える。

やはり、銀行が日銀にもつ当座預金の金利を引き上げるのが、最も効果があるように思われる。
当座預金の金利がつくとなれば、銀行は国債を売り始めるだろう。売った金を当座預金に入れて金利を稼ぐことができる。

国債の価格が下がって利回りが上がると、政府の新規発行の国債は既存国債の利回りを参考に利率を決めるので、やや高い金利になる。そうすると、国債を保有する金融機関は利回り改善するので、収益改善が見込めることになる。

国債の利払いが増えれば、それだけ政府から市場にマネーが出て行くことになる。緊縮財政を非難する人は、是非国債の利払いが増えることで、積極財政と同等の効果があることを理解してほしい。

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