スイスの試み

今年の6月にスイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われる。

http://www.businessnewsline.com/news/201602011233520000.html

今回国民投票が行われるのは、国民一人当たり毎月2500フラン(約30万円)の支給が受けられるようにする是非を問うものだ。

スイスはユーロに加盟しておらず、独自に発行するスイスフランを使用している。ベーシックインカムで毎月国民に支給するには通貨発行権が不可欠であり、その点スイスには実施可能な政策だ。

税収によってベーシックインカムを運用することは、不可能とは言わないまでも高所得者の超人的な忍耐が必要になる。その点、通貨発行権がある独自通貨を持つ国であれば、新たな発行によってまかなうことができる。

スイスの主な産業はロレックスなどに代表される時計といった精密機械や金融だ。共に非常に利益率が高く、スイスは貿易黒字国となっている。また、そのためにスイスフラン高で皮肉にも輸出企業は苦労しているようだ。

物価が低いところも日本と共通しており、これは需要不足を示している。つまり、所得が不足するために、供給に対して支出が少ない状態にある。この部分も日本と同じ構造であり、先進国の中では突出して物価が高いとは言われるものの、今現在はデフレに突入している。スイスの国債金利はマイナスである。

ベーシックインカムを導入するには、

1、自国通貨

2、経常収支が一定(赤字であっても膨らんでいないなければOK)

3、低いインフレ率

の3点を満たす必要があると考えている。スイスはこの三つの要件を満たしている。断っておくとこの要件は筆者独自の基準であり、経済学の教科書などには載っていない。

働かずに所得を得るなどということは、従来の価値観からすると受け入れがたいという人もいるだろう。しかし、自分の力で生きていける人などほんの一握りであり、その一握りですら一人の力で生きているわけではない。無人島に放り出されようものなら、億万長者であってもそう長くは生きられないだろう。無人島で金は無意味だからだ。

金持ちが一人逃げしても無意味だからこそベーシックインカム(再分配)だということになる。

ベーシックインカムを導入したからといって、国民が全員仕事を辞めてしまったらこの制度は成り立たなくなる。そこが難しいところだ。買い手ばかりになって売り手がいなければ、たちまちインフレになる。

アンケートによるとベーシックインカム導入で仕事を辞めると答えた人は、8%程度らしいので、実運用になってもうまくいくことは十分に考えられる。

日本はベーシックインカムどころか消費税を上げようとしているので、国民投票で通ればスイスが一足先にデフレ脱却することになるだろう。

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