ドナルドトランプと日本経済

先日、トランプとヒラリーの支持率が並んだという報道があった。今まではかなり水をあけられていたのが、時間が経つにつれてその差が縮小している印象だ。日本経済にとってトランプが大統領になるということは、どのような影響があるだろうか?

まず、トランプが主張している政策をあげてみよう。

・TPPの離脱
・高所得者への課税、2万5千ドル以下の所得者の所得税免除
・最低賃金の引き上げ
・関税の引き上げなどの保護貿易

いわゆるグローバリズムとは違い、国内を重視した内需主導型の経済政策が並んでいる。関税を撤廃して自由に貿易を行うのではなく、関税を高くして国内の産業を保護するような政策だ。

輸入品の価格が上がって国産が売れるようになれば、アメリカ国内の賃金が上がることが予想される。最低賃金の引き上げという直接的な政策を同時に行えば、その効果はより大きくなり、このことはアメリカ国内の物価上昇を引き起こすと考えられる。

また、財政出動にも積極的なようで、財源は刷って遣うという頼もしい発言もあり、国際政治は苦手なトランプも国民経済は理解しているようにみえる。

トランプが実際にこれらの政策を行うことができるとするなら、世界経済の行方は別としてもアメリカ経済は好調に回るだろう。演説の通り偉大なアメリカを取り戻すかもしれない。

もし、予想通りにアメリカの物価が上がれば円高ドル安になる。為替は2国間の物価上昇率の差によって決まるからだ。安倍政権が秋に向けて財政出動を行うという報道をうけて円安が進行しているが、11月にもしトランプが大統領になることになれば、ドル円の動きに大きな変化があると予想する。それまでは円安トレンドは続くだろう。

円高の原因

今年に入って円高が続いている。安倍政権が始まってからの円安が帳消しになるのではないかと危惧されているが、その原因はなんだろうか?

イギリスのEU離脱をうけて、安全資産である円が買われているという、よくわかったようなわからない説も飛び交っているが、結論から言えば円高の原因はマイナス金利の影響にほかならない。

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上の図はヤフーファイナンスから借りてきたドル円の週足チャートだ。マイナス金利がサプライズ的に金融政策決定会合で決定されたのが1月29日。週明けの2月1(月)からご覧のような怒涛の円高が始まっている。

 

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こちらは日足。より動きがはっきりとご覧いただけるのではないだろうか。1月29日の金融政策決定会合後、2月1日(月)から大きな下げが確認できる。2週間で10円以上の円高になった。たまたまチャートと一致していただけ、という論もあると思うので理屈としてなぜそうなるのかを追っていきたい。

今現在、一ドル100.50円前後で取引されているが、そもそもなぜ、200円でもなく50円でもなく100円なのだろうか。理由は簡単でアメリカで1ドルのものが日本では100円くらいだからだ。モノによって若干の高い安いはあるものの、アメリカで1ドルで売っているものは日本では100円前後で買える。

仮に日本でデフレが進行して100円のものが50円になったとすると、1ドル50円の円高になると予想される。100円で買えていたものが50円になって、アメリカでは同じ1ドルで変わらなければ1ドルが50円の価値ということだ。

為替の水準はその国の物価を反映したものになる。では、日銀のマイナス金利がなぜ円高、つまり日本の物価の下落を引き起こすのだろうか?。

次のことを行うと物価が下がる。

  • 増税
  • 財政支出の削減
  • 企業の設備投資の減少(借り入れの減少)
  • 住宅ローンなど個人の借り入れの減少

これらは国内のお金の総量を減らすという共通点がある。言い換えると私たちの所得(給料)を減らす効果がある。増税や財政支出の削減は説明するまでもないが、企業の設備投資の減少や住宅ローンの減少も私たちの所得を押し下げる。

企業の設備投資が減って工作機械の発注が減ると、当然、注文を受けるメーカーの売り上げが下がる。住宅メーカーなども同じだ。

3000万借りて家を建てると、住宅メーカーはこのお金を従業員の給料に使用する。一方、貸し出した銀行は3000万を貸し出したとしても、当然、預金者の残高を減らすことはない。預金者のお金を貸すとはいいながらも、残高を減らすことはないので、あたかも銀行が新たにお金を作り出したように見える。これを信用創造という。この信用創造によってあたらに3000万が市場に追加されたことになる。

信用創造を続けると、市場に出回る通貨の量(所得)が増える。トータルとして通貨の量が増えることで、国民全体の所得が押し上げられ、支出が増えて物価が上昇することになる。

マイナス金利は、銀行が日銀に金利を支払うものであり、市場から通貨が引き上げられる効果をもたらす。つまり、信用創造とは逆の通貨量の減少をもたらして、物価を下落させると考えられる。

日銀はマイナス金利によって、銀行に余剰な現金を持たせずに積極的な貸し出しを期待していたと思われるが、結果として貸し出しは増えずに銀行の収益の悪化をもたらした。これは単純に行員の給料が悪くなるだけの愚策だと言える。

銀行の収益が悪化するだけとはいえ、巡り巡って世の中に与えるインパクトは大きいだろう。銀行の収益が悪化した分、通貨量が減り、物価の下落を招き、円高になる。

グダグダと説明してきたが、結局、物価が為替を決定するということだ。アメリカで買えるものが日本ではいくらで買えるのか?そして、アメリカと日本の物価上昇率がそれぞれどのように動くかによって、為替は決定される。今回の日銀のマイナス金利は、各方面の予想に反して物価を押し下げる効果があったということだ。

秋頃に20兆から30兆の大型の財政出動が行われるという予想もあるので、そうなると国内の通貨量が増えて物価上昇が起こる。もしそうなれば、円安になるとここで予想してみよう。結果はおたのしみということで。

イギリスのEU離脱

イギリスが国民投票でEUを離脱することになり、それに伴ってポンドが急落している。円も一時期99円代の円高となり、株価が1200円以上も値下がりするなど、一時リーマンショックを彷彿とさせる事態になったが、10日以上経って落ち着きを取り戻しつつあるようだ。

ポンドが下がるというのは、1ポンド150円から130円のように変動することだ。イギリス製の150円の製品が130円に値下がりするので、外国で良く売れるようになる。しかし、イギリス人にとっては1ポンドで売れていることに変わりはないので、輸出産業にとってはポンドが下がるというのは朗報なのだ。

日本も一時期120円代になったときは、輸出企業は色めきだったことだろう。しかし、再び円高に舞い戻ってしまった。最近ではG7やサミットなどで通貨安競争はお互いにやめよう、という合意がなされている。ある国の製品が安く大量に入って来れば、そのぶん自分のところの製品が売れなくなるからだ。

しかし、今回イギリスは離脱によってポンド安という思わぬボーナスを手にすることになった。マスコミはポンド暴落というセンセーショナルな表現を使っているが、イギリスにとってポンド安は悪い話ではない。

日本でも中国人により爆買があったように、イギリスでもポンド安によって外国人観光客が増えることは十分に考えられる。しかし、その反面輸入にとってはポンド安は厳しいかもしれない。値段は変わらないのにポンドが安くなることによって、輸入製品の価格が上昇することになるからだ。

輸入製品が高くなって一時的に生活が苦しくなるかもしれないが、一方では国内の同種の製品に勝機が見え始める。輸入品に比べて同じくらいか、それよりも安ければ国産を買う人が増えるからだ。こうしたイギリス国内産業の隆盛も考えられる。輸出が伸びて、内需関連の産業が伸びればイギリスにとってはいいことづくめのような気もする。

ここまでは純粋にマクロ経済的な切り口で、政治的な変動は考慮に入れていない。今後EUからどのような形で(関税など)離脱するかに左右される。

世界的に売りたい症候群にかかっていて、どの国も自分のところの製品を売りたがっている。国内では市場が飽和して売れない(と思っている)からだ。その点、イギリスは少し有利な立場にいることは確かだ。