なぜ、経済成長が必要なのか?

2016年11月23日 マクロ経済

戦後、日本は経済成長をすることで豊かになりました。食べるものもなかった時代から、ものに溢れる時代になれたのも経済成長があったからです。フニセフというとアフリカの貧しい子供たちのためのものというイメージがありますが、かつては日本もお世話になったことがあります。

その当時から比べると経済的には十分に発展して、もうこれ以上の成長は必要ないのではないかと思われるかもしれません。しかし、テレビやネットのニュースではアベノミクスの成長戦略といった、経済成長を求める記事が多く見られます。

本当にこれ以上経済成長する必要があるのでしょうか?

そのことを考える前に、まず、経済成長とはどういうことか確認したいと思います。

そもそも経済成長とは?経済成長するというのは去年10万台売れた車が、今年は11万台売れることです。販売数量が毎年増えていけばそれだけ経済成長したことになります。
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200万の車が10万台売れたとすると、その年の売り上げは2000億円となり、次の年に11万台売れれば2200億の売り上げになります。販売台数が増えて、売り上げ金額が増えていくことが経済成長です。

しかし、発展途上国ならまだしも人口の増えない日本で、毎年売り上げを伸ばしていくことは可能なのでしょうか?

経済成長の2つのパターン実は経済成長するもう1つのパターンがあります。

先ほどの例では10万台売れた車が、次の年には11万台売れるのが経済成長だと説明しましたが、車本体の価格を上げることで売り上げを伸ばすこともできます。

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本体価格が220万円になれば、同じ販売台数でも売り上げは2200億円になります。経済成長にも販売数量が増えて成長するタイプと、価格が上がることで成長するタイプがあります。

車の本体価格が上がったのはオプションを付けたからではありません。同じものの価格が上がったと考えてください。

安部政権はデフレ脱却を掲げて経済政策を行ってきました。デフレ脱却は物価を上げることですので、実は経済成長をするということでもあります。日本の目指す経済成長はこの物価上昇型の経済成長なのです。

しかし、なんのために物価を上げる必要があるのでしょうか?

物価をなぜ上げるのか? 

日本には裕福な人もいれば年金生活の高齢者もいます。高齢者や病気で働けない人は、社会的なサポートが必要です。そのために私たちは税金や社会保険料を負担しています。

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オレンジの線が最低限の生活を送ることができる所得の水準だとしたら、

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このようにお金を持っている人から少しずつ負担してもらうわけです。しかし、今の日本では65歳以上の高齢者は3000万人を超えており、それに対して現役世代は6500万人ほどです。しかも、そのうちの2000万人は賃金の安い非正規雇用となっています。もっと厳密に図を描くと、

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こういったイメージでしょうか。こうなってくると、最もお金をもっている人がたくさん負担しなければならなくなります。しかし、いくらお金をもっているからといっても、大きな負担をすることは不公平にも思えます。

そこで政府は借金をして年金や医療費をまかないます。政府がお金を借りるのは銀行などの金融機関です。

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現役世代はさほど負担しなくても、年金や医療費を十分に受けとることができます。金融機関から借りて遣うと、世の中に流通するお金が以前よりも増えることになります。銀行が貸し出しを行っても、預金者の残高が減るわけではないからです。

政府は金融機関から借りたお金を使用することで、社会保障の費用を捻出しました。それは同時に通貨の総量を増やすことにもなります。

毎年、借りては遣うといったことを続けいていくと、やがて次のように大きな通貨の膨張が起きることになります。

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世の中的にお金が増えたので、みんながお金持ちになったような気になりますが、その分、最低限の生活費を示すオレンジの線も上がっています。つまり、インフレになったのです。

政府がお金を借りて年金や医療費を継続的に捻出すると、物価の上昇が起こります。

裕福な人に全てを負担させるわけにもいかず、かといって高齢者や働けない人を見殺しにするわけにもいきません。

政府がお金を借りて遣うことで年金や医療費を捻出する代わりに、物価の上昇が起こったということです。

もし、裕福な人が全てを負担して、財政赤字を出さずに済むなら、物価上昇を起こすことなく社会保障も充実させることができます。

しかし、恐らくそういった寛大な人はごくわずかでしょう。現実的には政府の借金による通貨の膨張によって、社会保障費をカバーすることになると思われます。

つまり、物価の上昇が起きるということは、その裏で年金や医療費などの再分配が、きちんと行われている可能性が高いことを示しています。

まとめ
年金や医療費といった社会保障を行うためには、お金をもっている人に課税するか、政府の借金によって原資の確保が必要になります。

現実的には社会保障費を税金や保険料のみで実現するのは難しいため、政府の借金による再分配がおこなわれます。それに伴う物価の上昇が経済成長をもたらすことになります。

目的は経済成長そのものではなく、物価上昇を伴う再分配です。

これはあくまで日本のようなある程度経済成長した先進国の話ですので、発展途上国は販売量が増えるタイプの経済成長が必要になります。また、新たな製品やサービスが出てくることによって、経済成長することは歓迎すべきところです。

90年代までは企業が通貨の膨張の主役でした。設備投資をするために、銀行からの借り入れが多かったためです。
1980年に470兆だった企業の金融負債は、1990年には1300兆を超えて10年で3倍近く増えています。

企業が設備投資をすることで、従業員の給料は大幅にアップしてきました。また、法人税や所得税などもあり、高齢者も1000万人程度だったので(1980年の日本の人口は1億1000万人)十分に現役世代が支えることができていました。

2016年現在で企業の金融負債は1400兆円ですので、その後の26年間はほとんど伸びていません。その代わりに、1990年から2016年にかけて、政府が300兆から1200兆円まで金融負債を増やして社会保障をカバーしてきました。

しかし、80年代の企業の負債の増やし方には及んでいません。このことが物価上昇率の低迷、つまり、経済の低迷を招いています。

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