安倍政権はMMTをやっているのか?

今、MMTと呼ばれる経済理論がアメリカで話題になっています。

このMMTを一言で言えば、物価上昇率が適正な範囲内であれば、政府は財政赤字を気にする必要はないというものです。

FRBのパウエル議長をはじめ、サマーズ元財務長官、黒田日銀総裁など経済界の重鎮はMMTに辛辣ですが、このブログではMMTを支持しています。

アメリカでは法律で政府債務の上限が決められていて、毎年のように与野党が予算編成でもめて、 政府機関が閉鎖されたりしています。


そんな中、予算の上限を気にする必要がないという理論は、大きな議論を巻き起こしました。


議論でよく引き合いに出されるのが、日本です


日本はGDPの200%を超える政府債務を抱えながら、物価上昇率は低く保たれて特に大きな問題を引き起こしていません。

アメリカの政府債務は対GDP比で100%そこそこですので、仮に今の2倍に政府債務が膨らんだとしても、日本をみればそれほど問題ないと考えることができます。

これをもって、日本はMMTのモデルだと考えているわけです。

ところが、4月4日の参院決算委員会で安倍総理は、MMTはやっていないと否定しています。

どちらが本当でしょうか?

結論を言うと、今回に関しては安倍総理は珍しく本当の事を言ったといえます。

第二次安倍政権が誕生した、平成25年度からの一般会計の決算を見てみましょう。

公債借入公債返済赤字
24年度
50.0 兆
21.0 兆 29.0 兆
25 年度 43.4 兆 21.3 兆 22.1 兆
26 年度 38.5 兆 22.2 兆 16.3 兆
27 年度 34.9 兆 22.5 兆 12.4 兆
28 年度 38.0 兆 22.1 兆 15.9 兆
29 年度 33.6 兆 22.5 兆 11.1 兆

平成24年末に安倍政権が誕生していますので、安倍政権が予算編成を行ったのは平成25年度からになります。

30年度がまだ出ていませんので29年度分までですが、安倍政権はゴリゴリの緊縮財政だとわかると思います。

返済額はほぼ一定ですが、借入が劇的に減っています

一般的な現政権に対するイメージは、軍事費やバラマキ型の外交で税金の無駄遣いを行っているように見えるかもしれませんが、実はかなりケチな財政運営を行っています。

借入が減った分は、平成26年の8%消費増税によってカバーされています。

注目していただきたいのは、25年度から、26年度にかけて公債借入が一気に5兆円も減っているところです。

8%に引き上げたことによって、消費税は5兆円程度増収になっていますが、社会保障費が1兆円程度増えた意外は、他の支出は一切増えていません。

つまり、消費増税分は見事に公債費圧縮の原資に使われてしまいました。

消費増税は社会保障に回っているという噂もありますが、そうではないのです。

政府の骨太の方針(嫌な響きですが)では、財政赤字は2025年にゼロになる予定です。

このことから、10月に予定されている消費増税は公債費圧縮の原資となる可能性が、極めて高いということが言えます。

財政赤字額を問題にしないMMTとは、真逆の姿勢です。

つまり、参院決算委員会で安倍総理が言ったように、安倍政権になってからMMT的な経済政策は行っていません

2000年から2018年までにアメリカのGDPは2倍に成長しており、日本はほぼ同額にとどまっています。

その間、アメリカの政府債務残高は4倍以上になり、対する日本は1.6倍程度です。

日本のGDPと政府債務の比率は、あたかも積極財政を行っているかのように見えますが、日本がMMT的だったのは2000年より前の話です。

2000年以降にMMTを積極的に行ったのはアメリカであり、日本は真逆の緊縮財政に走って経済が縮小したというのが現実です。

消費税は社会保障には使われていないという事実

10月15日の臨時閣議で安倍総理は消費税10%への増税を明言し、落ち込む消費対策としてプレミアム商品券やクレジットカードのポイント還元などを指示しています。

一回上がってしまったら減税しないかぎり10%が続くのに、本気で一時的な商品券やポイントでしのごうとしているのでしょうか。めまいがしてくるようなセンスです。

ただ、多少景気が落ち込んでも、社会保障のためならなら仕方がないという意見もあるようです。しかし、本当に社会保障に使われているのでしょうか。まず、現状の社会保障をおさらいしておきたいと思います。

社会保障の概略

政府には一般会計と特別会計という2つの財布があり、所得税、法人税、消費税などは一般会計へ入って、国民・厚生年金や介護保険などの掛け金は特別会計に入ります。平成28年度の国民・厚生年金の給付総額は51兆円で、うち40兆円が特別会計から支払われ、11兆円が一般会計から補填されました。支払われる年金の8割が保険税として納めた特別会計から支出されており、2割が一般会計から補助的に支出されています。年金に限らず、健康保険、介護、子育てなどの社会保障のメインは特別会計であり、補助的に税金が入っているというのが大雑把なイメージになります。

年金は賦課方式で現役世代が支払った保険税が、右から左にそのまま高齢者に給付されます。このことから税金で補填しなくても、私たちが保険料を納める限り、8割程度の給付水準は維持できるといえます。また、年金は破綻することが懸念されていますが、年金特別会計の残高は29年度末で164.1兆円あり、破綻するどころか逆に過去最高に達しています。平成元年末には73.4兆円だったことから平成時代を通して2.2倍になりました。これは、取り崩すことなく私たちの保険料が積み立てられたのと、運用が株式にシフトしたことで運用益があがったことによるものです。

財務省の詭弁

平成26年に消費税を8%へ増税したときには、税収が5.2兆円ほど増えましたが、社会保障関連費は0.9兆円しか増えていません。

25年度 26年度
消費税 10.8兆円 16.0兆円
社会保障関連費 29.2兆円 30.1兆円

しかし、財務省は消費税増税した分は、全て社会保障に使っていると公式に発表しています。大ウソなんですが、頭の切れる?官僚なので、そのへんの逃げ道は用意されています。それは今まで社会保障費として公債費(借金)によって穴埋めしてきたものを、消費税で賄うようにしたというものです。直接的には公債費を抑えて、足りない分を消費税で肩代わりしたという理屈です。実際に公債費は消費税の税収が増えた分、低く抑えられています。

25年度 26年度
消費税 10.8兆円 16.0兆円
公債費 43.4兆円 38.4兆円
社会保障関連費 29.2兆円 30.1兆円

一般会計には所得税や法人税、消費税がごちゃまぜに入っているので、消費税は社会保障で所得税は防衛費といった考え方はしません。集めた税金を1つの財布に入れているので、消費税を何に使うかなど決めようがないのです。そんなことを言うなら、国会議員の給料のために消費税をあげたと、言って言えなくはありません。今までは借金によって議員報酬を支払ってきたけど、消費税で払うようにする、と言っても理屈は通ります。それを恩着せがましく社会保障に使っているというのですから、悪質なウソといっていいでしょう。

消費税の目的

仮に10%に上がっても、社会保障が純増するわけではないと考えています。公債によって支えられてきたものを消費税に置き換えただけで、実際には公債費の抑制に使われるでしょう。社会保障に使ったという詭弁が使われる可能性が大きいので、注意して見ておく必要があります。現在の政府が全力で目指している方向は、社会保障の充実ではなく、政府債務の削減です。学校にエアコンがつかないのも、生活保護が削減されるのも、災害復旧が進まないのも、全て借金の抑制のためです。

政府は2025年までに借金に頼らない予算編成ができるように目指しています。29年度の決算ベースでみると、あと11兆円ほど支出削減するか税収が上がれば、借金に頼らない財政運営ができます。これを全て消費税で行おうとすれば、15%〜20%にはなるのではないでしょうか。それまでは緊縮財政と増税の猛威が国民を襲い続けるでしょう。