消費税は社会保障には使われていないという事実

10月15日の臨時閣議で安倍総理は消費税10%への増税を明言し、落ち込む消費対策としてプレミアム商品券やクレジットカードのポイント還元などを指示しています。

一回上がってしまったら減税しないかぎり10%が続くのに、本気で一時的な商品券やポイントでしのごうとしているのでしょうか。めまいがしてくるようなセンスです。

ただ、多少景気が落ち込んでも、社会保障のためならなら仕方がないという意見もあるようです。しかし、本当に社会保障に使われているのでしょうか。まず、現状の社会保障をおさらいしておきたいと思います。

社会保障の概略

政府には一般会計と特別会計という2つの財布があり、所得税、法人税、消費税などは一般会計へ入って、国民・厚生年金や介護保険などの掛け金は特別会計に入ります。平成28年度の国民・厚生年金の給付総額は51兆円で、うち40兆円が特別会計から支払われ、11兆円が一般会計から補填されました。支払われる年金の8割が保険税として納めた特別会計から支出されており、2割が一般会計から補助的に支出されています。年金に限らず、健康保険、介護、子育てなどの社会保障のメインは特別会計であり、補助的に税金が入っているというのが大雑把なイメージになります。

年金は賦課方式で現役世代が支払った保険税が、右から左にそのまま高齢者に給付されます。このことから税金で補填しなくても、私たちが保険料を納める限り、8割程度の給付水準は維持できるといえます。また、年金は破綻することが懸念されていますが、年金特別会計の残高は29年度末で164.1兆円あり、破綻するどころか逆に過去最高に達しています。平成元年末には73.4兆円だったことから平成時代を通して2.2倍になりました。これは、取り崩すことなく私たちの保険料が積み立てられたのと、運用が株式にシフトしたことで運用益があがったことによるものです。

財務省の詭弁

平成26年に消費税を8%へ増税したときには、税収が5.2兆円ほど増えましたが、社会保障関連費は0.9兆円しか増えていません。

25年度 26年度
消費税 10.8兆円 16.0兆円
社会保障関連費 29.2兆円 30.1兆円

しかし、財務省は消費税増税した分は、全て社会保障に使っていると公式に発表しています。大ウソなんですが、頭の切れる?官僚なので、そのへんの逃げ道は用意されています。それは今まで社会保障費として公債費(借金)によって穴埋めしてきたものを、消費税で賄うようにしたというものです。直接的には公債費を抑えて、足りない分を消費税で肩代わりしたという理屈です。実際に公債費は消費税の税収が増えた分、低く抑えられています。

25年度 26年度
消費税 10.8兆円 16.0兆円
公債費 43.4兆円 38.4兆円
社会保障関連費 29.2兆円 30.1兆円

一般会計には所得税や法人税、消費税がごちゃまぜに入っているので、消費税は社会保障で所得税は防衛費といった考え方はしません。集めた税金を1つの財布に入れているので、消費税を何に使うかなど決めようがないのです。そんなことを言うなら、国会議員の給料のために消費税をあげたと、言って言えなくはありません。今までは借金によって議員報酬を支払ってきたけど、消費税で払うようにする、と言っても理屈は通ります。それを恩着せがましく社会保障に使っているというのですから、悪質なウソといっていいでしょう。

消費税の目的

仮に10%に上がっても、社会保障が純増するわけではないと考えています。公債によって支えられてきたものを消費税に置き換えただけで、実際には公債費の抑制に使われるでしょう。社会保障に使ったという詭弁が使われる可能性が大きいので、注意して見ておく必要があります。現在の政府が全力で目指している方向は、社会保障の充実ではなく、政府債務の削減です。学校にエアコンがつかないのも、生活保護が削減されるのも、災害復旧が進まないのも、全て借金の抑制のためです。

政府は2025年までに借金に頼らない予算編成ができるように目指しています。29年度の決算ベースでみると、あと11兆円ほど支出削減するか税収が上がれば、借金に頼らない財政運営ができます。これを全て消費税で行おうとすれば、15%〜20%にはなるのではないでしょうか。それまでは緊縮財政と増税の猛威が国民を襲い続けるでしょう。

消費税は何に使われるのか?


2018年10月15日の臨時閣議で、安倍総理大臣は来年の10月1日から消費税を8%→10%への引き上げを明言しました。増税に伴う景気への影響を緩和するために、軽減税率やプレミアム商品券の導入などが検討されているようです。ただ、問題は増税分を何に使うのかだと思います。本当に必要であれば増税は仕方がないことですし、不要な増税なら反対すべきでしょう。

5%→8%増税分は何に使われたのか

前回、2014年4月に5%→8%に上がりました。上がった分の3%は社会保障に回すという約束でしたが、それは守られていません。それまで10兆円そこそこだった消費税の税収は、8%にアップした平成26年度の決算では16.0兆円に増加しています。それらが社会保障費に使用されたかというと、そうではないのです。ちなみに社会保障関連費というのは、年金、医療、介護、子育ての4部門から構成されています。

平成25年度 平成26年度
消費税による税収 10.8兆円 16.0兆円
社会保障関連費 29.2兆円 30.1兆円

増税によって税収は5兆円以上上がっているにもかかわらず、使われた社会保障関係費は1兆円も上がっていません。社会保障関連費用は少子高齢化に伴い、毎年1兆円ずつ程度は自然に上がっていくと考えられています。つまり、0.9兆円上がってはいますが、これは必要だから上がったのであり、消費税増税によって社会保障が拡充されたわけではないのです。

では、増税分の4兆円はどこにいったのかというと、借金の抑制に使用されています。予算を組むときに税金で賄いきれない部分を公債を発行して調達していますが、この公債費抑制に使われました。

平成25年度 平成26年度
消費税による税収 10.8兆円 16.0兆円
公債金収入 43.4兆円 38.4兆円
社会保障関連費 29.2兆円 30.1兆円

本来、各種税金が何に使われるのか?というのは決まっているものではありません。所得税は防衛費に使って、消費税は社会保障に使うというものではないのです。税金や公債から集めてきたお金を一般会計という一つの財布に入れて、その財布から予算を組むわけですから、どのお金がどの予算に充てられるかはわかりようもありません。ただ、消費税が増収になって公債費が抑制されていますので、「消費税増税は社会保障につかいます!」ではなく「消費税増税は公債費抑制に使います!」というべきでしょう。

8%→10%は必要か?

2014年の消費税増税は公債費の抑制に使われていることがわかりました。政府は2025年までにプライマリーバランスを黒字化させると宣言しています。プライマリーバランスというのは、公債費の借入と返済のバランスのことで、プライマーバランスを黒字化するというのは、借入よりも返済を多くすることです。返済のほうが多ければ、いずれ借金は解消されます。5%→8%の増税はプライマリーバランスを黒字化させるためにあったといってもいいでしょう。ちなみに平成29年度の借入は33.5兆円で、対する返済は22.5兆円でした。つまり、政府は今後11兆円以上は公債費の圧縮を考えているということになります。安倍総理大臣は10%にあげることで全世代型社会保障に使用すると言っていますが、8%に上げた時の前科がありますのでおいそれと信じるわけにはいかないでしょう。

債務の返済はするべきではない

国と地方の財政赤字は1200兆を超えていますが、これを減らそうとしたら景気に対する悪影響が起こります。プライマーバランスを黒字化させるには、最低でも11兆円を増税か歳出削減でひねり出す必要があり、消費税だけでやろうとすれば20%にもなります。

長期的に見れば政府債務というのは、じわじわ右肩上がりに増えていくものです。1200兆円あるからといって、心配する必要はなく、むしろ増税による消費の低迷のほうが問題になります。

まとめ

8%に上がった時は公債費の抑制に使用されました。来年の10%への増税も同様に、社会保障に使われる見込みは少ないと思われます。今後も政府の方針として、公債圧縮することで、不景気が続くことが予想されます。