MMTのキモ

ステファニーケルトン教授が来日しました。

三橋さんのブログにも登場していた、水槽の図を紹介しようと思います。

ケルトン教授がMMTを説明する際に使用したものらしく、ケルトン教授自身のオリジナルの説明は聞いたことがないのですが、一目で何を言いたいのかがわかる図です。

水槽が日本国内を表しており、政府支出が水道から注がれています。

一方、税金が水槽から水を抜いていて、水槽の中は民間の金融資産の総量ということになります。

極めてシンプルですが、お金の流れをよく表していると思います。

水槽の水位は政府支出と税金によってコントロールされるわけですが、水槽の中には銀行もあり、そこでも信用創造によって水(お金)が生まれています。

なので、必ずしも支出と税金の差が水槽に蓄積されているわけではありません。

政府が意図しないところで、信用創造や信用収縮がおきますので、慎重に水位を調整する必要があります。

この図で厄介なのは、水位が上がったとしても、必ずしも物価が上がるわけではないというところです。水位がそのまま物価を表しているわけではありません。

水位はマネーストックを表しており、物価ではないからです。

普通に考えれば世の中にお金が溢れればインフレになるわけですが、考えないといけなのは格差の問題です。

20年くらいGDP横ばいで、国民総所得は一定のはずなのに、なぜか貧困が増えているというのは、所得の偏りが大きくなったということに他なりません。

政府支出をしても多くの人にお金が行き渡らなければ、100兆円支出してもインフレにはなりません。

日本のどこかに金欠病で苦しんでいる人がいる限り、インフレにはならないと考えられます。

マネーストックがいくら増えようと、金欠病を克服するまで政府支出は増やす必要があります。

溢れそうになったら、蛇口を閉めて下から抜けばいいというわけではないということです。

これはMMTの主張する財政の基準を物価に置くということで矛盾はありませんが、図として物価を説明しきれていないという意味で、もう少し工夫がいるのかもしれません。

物価は値段のことではありません。

MMTの議論が盛り上がっています。

MMTの主張は、財政赤字は物価上昇率の許す範囲であれば、その額は問題にならないというものです。

では、物価とは何なのか少し整理したいと思います。

ここで述べる物価理論は、からあげ弁当オリジナル理論ですので、そのつもりでお読みください。 

何でもそうですが、何かを他者と交換する場合、お互いの持ち物の価値を値踏みして交換します。

GパンとTシャツなら、Gパンのほうが生地も多いので価値が高いとします。

だったら、Gパン1枚とTシャツ2枚なら交換してもいいよ、といった感じになるでしょう。

お金を出して買う場合も全く同じで、買うものの価値と、円の価値を比較して値段が決まります。

値段はモノとお金の価値の合成値であると言うことです。

例えば野菜の値段が上がったとしたら、可能性としては2つ考えられます。

1つは天候不順で野菜か不作になって値段が上がる場合と、もう一つはお金の価値が下がって値段が上がる場合です。

インフレという場合は、後者の事を指します。

同じ値段が上がるにしても、インフレとそうでないものがあるという事です。

物価が上がるというのは、お金の価値が下がった結果、値段が上がることを指します。

原油高でガソリンが値上がりしたのを、インフレだというのは間違っているということですね。

お金にしろ野菜にしろ少なくなると価値が高まり、多くなると価値が下がります。

野菜の価値(量)は天候や生産技術などで決まりますが、お金の価値(量)は税制と政府支出と信用創造で決まります。

税金が高くなると、市場に出回るお金の量が減って、お金の価値が上がることで物価が下がります。

逆に政府支出や信用創造が活発になると、お金がより多く出回りますので、物価が上がります。

信用創造というのは、企業や個人が銀行からお金を借りて使うことです。

借りたお金というのは、新たに創出されたお金ですので、その分市場にお金が増えることになります。

企業が設備投資したり、景気がいいときにインフレになるのはこのためです。

ただ、企業の設備投資は税制と政府支出に依存しています。

リニアモーターカーを九州から北海道まで通すと国が宣言して投資減税などを行えば、大手ゼネコンは様々な投資を行うでしょう。

逆に企業に対して投資額に応じて課税するなどといった事をやれば、しょぼくれて確実に信用創造は減ります。

国内を還流するほとんどのお金は民間の信用創造によるものですが、ほぼ税制と政府支出によって決まります。

政府の態度によって、民間の信用創造は調子に乗りやすく、しょぼくれやすいのです。

そういう意味ではお金の量を決定するのは、税制と政府支出の2つだといって良いと思います。

物価が上がるときというのは、すべての物やサービスが一斉に上がります。

売買の基準となるお金の価値が下がるわけですから、当然ですね。

値段というのは単なるモノの値段ではなく、モノの価値とお金の価値の合成値であるという事を意識すると、色々面白い発見があるかもしれません。

ステファニー・ケルトン教授来たる!【MMT】

あのMMTで有名なステファニーケルトン教授が、7月に日本でシンポジウムを行うようです。


【藤井聡】ケルトン教授を招聘した、MMT国際シンポジウムを開催します!

バーニーサンダースも来年の大統領選挙に出馬するらしいので、再び経済アドバイザーに就任されるのでしょうか。

いずれにせよ、とてつもないビッグウェーブが暫く続きそうです。

あと、こちらの中野剛志さんのコラムも素晴らしいので是非ご覧ください。

MMTが、こんなにも「エリート」に嫌われる理由

政府(日銀)が円を発行しているのはご存知だと思いますが、その日本政府が円を借金したとしても、返せなくなることはないというのがMMTのベースになります。

三橋さんや西田さんなど信用創造の理屈にこだわってますが、あまりそこにこだわるとかえってわかりにくくなるような気がしています。

からあげ弁当は経済のことを考えるときは、下のような一枚の絵を思い浮かべます。

政府(日銀)が通貨を発行して世の中を回り、最後に税金として政府に戻っていくイメージです。

税金より政府支出が増えれば世の中に出回る量が増えます。

公務員給料や社会保障、教育など何でもいいのですが、何かに支出をすることによって流通する通貨が増えれば、インフレになります。

ガンガン支出しても、一方でガンガンに税金をとれば、バランス的に物価はさほど上がらないと考えることができます。(大きい政府)

逆に少ししが政府が支出しないとしても、税金がそれ以上に安かったらインフレになります。(小さい政府)

あり得ないことですが、支出より税金のほうが高くなれば、いずれ円は無くなります。

風呂のお湯も、蛇口から入るものより、栓が抜けて出ていくほうが多ければ、いつかなくなるのと同じことです。

通貨が減っていくときはデフレになります。

政府支出と税金はイコールで良いのではないか、という意見が出てくるかと思いますが、ここに落とし穴があります。

イコールということは、財務省のいうプライマリーバランスの均衡と同義です。

実は支出と税がバランスするとまずいのです。

少し前に流行った、ピケティの「資本収益率は産出と所得の成長率を上回ると、経済は持続不可能だ」というのを覚えていらっしゃるでしょうか。

自由に経済活動をしていくと、金持ちとそうでないの差がジャンジャン開いていきます。

政府支出と税収が均衡していると、お金のパイは一定ですから、徐々に金持ちとそうでない人がでてきて、みるみる生活が苦しくなるはずです。

もちろん、沢山持っている人から税金をとって再分配するわけですが、全員同じ資産になるほど徴税するわけにも行きません。

そこで、政府は通貨発行によって、税金よりも政府支出を多くして、お金のない人に配ることが必要になります。

毎年、世の中に出回るお金の量が増えますので、徐々にインフレが進むことになります。

昔の物価が安いのはそのせいです。

もう少しディテールを追加したものが、下の図になります。

ここでは銀行が貸出することで、信用創造を行っています。

国内の通貨量は政府支出と税の他に、銀行の貸出と返済で決まることになり、日銀は銀行の貸出態度を管理することで、物価を調整します。

貸出が増えれば通貨量が増えて物価が上昇し、返済すると通貨量が減ることで下落します。

ただ、どの程度貸し出すかは、銀行と借り手の合意の問題ですので、日銀が金利を操作しても、政府支出や税金ほどコントロールがビシッと決まるものではありません。

だいたい、日銀が金融緩和するときは、政府も補正予算を組んだり、減税したりするので、過去のデータをみても、それが日銀の金融政策が効いたのか、補正予算の効果なのかは区別はつかないでしょう。

日銀の金融緩和は貸出増加になれば効果はあったのかもれませんが、企業の設備投資は微増ですので、そこまで効果があったかどうかは疑問です。

バブルが崩壊して借り手が少なくなったり、いわゆる信用収縮(借金返済)が起こるとデフレになります。

借金はインフレ圧力で、借金返済はデフレ圧力になります。

簡単な図ですが、通貨が増えているのか減っているのかを考えるだけでも、物価や経済について色々考えることができます。

安倍政権はMMTをやっているのか?

今、MMTと呼ばれる経済理論がアメリカで話題になっています。

このMMTを一言で言えば、物価上昇率が適正な範囲内であれば、政府は財政赤字を気にする必要はないというものです。

FRBのパウエル議長をはじめ、サマーズ元財務長官、黒田日銀総裁など経済界の重鎮はMMTに辛辣ですが、このブログではMMTを支持しています。

アメリカでは法律で政府債務の上限が決められていて、毎年のように与野党が予算編成でもめて、 政府機関が閉鎖されたりしています。


そんな中、予算の上限を気にする必要がないという理論は、大きな議論を巻き起こしました。


議論でよく引き合いに出されるのが、日本です


日本はGDPの200%を超える政府債務を抱えながら、物価上昇率は低く保たれて特に大きな問題を引き起こしていません。

アメリカの政府債務は対GDP比で100%そこそこですので、仮に今の2倍に政府債務が膨らんだとしても、日本をみればそれほど問題ないと考えることができます。

これをもって、日本はMMTのモデルだと考えているわけです。

ところが、4月4日の参院決算委員会で安倍総理は、MMTはやっていないと否定しています。

どちらが本当でしょうか?

結論を言うと、今回に関しては安倍総理は珍しく本当の事を言ったといえます。

第二次安倍政権が誕生した、平成25年度からの一般会計の決算を見てみましょう。

公債借入公債返済赤字
24年度
50.0 兆
21.0 兆 29.0 兆
25 年度 43.4 兆 21.3 兆 22.1 兆
26 年度 38.5 兆 22.2 兆 16.3 兆
27 年度 34.9 兆 22.5 兆 12.4 兆
28 年度 38.0 兆 22.1 兆 15.9 兆
29 年度 33.6 兆 22.5 兆 11.1 兆

平成24年末に安倍政権が誕生していますので、安倍政権が予算編成を行ったのは平成25年度からになります。

30年度がまだ出ていませんので29年度分までですが、安倍政権はゴリゴリの緊縮財政だとわかると思います。

返済額はほぼ一定ですが、借入が劇的に減っています

一般的な現政権に対するイメージは、軍事費やバラマキ型の外交で税金の無駄遣いを行っているように見えるかもしれませんが、実はかなりケチな財政運営を行っています。

借入が減った分は、平成26年の8%消費増税によってカバーされています。

注目していただきたいのは、25年度から、26年度にかけて公債借入が一気に5兆円も減っているところです。

8%に引き上げたことによって、消費税は5兆円程度増収になっていますが、社会保障費が1兆円程度増えた意外は、他の支出は一切増えていません。

つまり、消費増税分は見事に公債費圧縮の原資に使われてしまいました。

消費増税は社会保障に回っているという噂もありますが、そうではないのです。

政府の骨太の方針(嫌な響きですが)では、財政赤字は2025年にゼロになる予定です。

このことから、10月に予定されている消費増税は公債費圧縮の原資となる可能性が、極めて高いということが言えます。

財政赤字額を問題にしないMMTとは、真逆の姿勢です。

つまり、参院決算委員会で安倍総理が言ったように、安倍政権になってからMMT的な経済政策は行っていません

2000年から2018年までにアメリカのGDPは2倍に成長しており、日本はほぼ同額にとどまっています。

その間、アメリカの政府債務残高は4倍以上になり、対する日本は1.6倍程度です。

日本のGDPと政府債務の比率は、あたかも積極財政を行っているかのように見えますが、日本がMMT的だったのは2000年より前の話です。

2000年以降にMMTを積極的に行ったのはアメリカであり、日本は真逆の緊縮財政に走って経済が縮小したというのが現実です。