円高の原因

今年に入って円高が続いている。安倍政権が始まってからの円安が帳消しになるのではないかと危惧されているが、その原因はなんだろうか?

イギリスのEU離脱をうけて、安全資産である円が買われているという、よくわかったようなわからない説も飛び交っているが、結論から言えば円高の原因はマイナス金利の影響にほかならない。

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上の図はヤフーファイナンスから借りてきたドル円の週足チャートだ。マイナス金利がサプライズ的に金融政策決定会合で決定されたのが1月29日。週明けの2月1(月)からご覧のような怒涛の円高が始まっている。

 

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こちらは日足。より動きがはっきりとご覧いただけるのではないだろうか。1月29日の金融政策決定会合後、2月1日(月)から大きな下げが確認できる。2週間で10円以上の円高になった。たまたまチャートと一致していただけ、という論もあると思うので理屈としてなぜそうなるのかを追っていきたい。

今現在、一ドル100.50円前後で取引されているが、そもそもなぜ、200円でもなく50円でもなく100円なのだろうか。理由は簡単でアメリカで1ドルのものが日本では100円くらいだからだ。モノによって若干の高い安いはあるものの、アメリカで1ドルで売っているものは日本では100円前後で買える。

仮に日本でデフレが進行して100円のものが50円になったとすると、1ドル50円の円高になると予想される。100円で買えていたものが50円になって、アメリカでは同じ1ドルで変わらなければ1ドルが50円の価値ということだ。

為替の水準はその国の物価を反映したものになる。では、日銀のマイナス金利がなぜ円高、つまり日本の物価の下落を引き起こすのだろうか?。

次のことを行うと物価が下がる。

  • 増税
  • 財政支出の削減
  • 企業の設備投資の減少(借り入れの減少)
  • 住宅ローンなど個人の借り入れの減少

これらは国内のお金の総量を減らすという共通点がある。言い換えると私たちの所得(給料)を減らす効果がある。増税や財政支出の削減は説明するまでもないが、企業の設備投資の減少や住宅ローンの減少も私たちの所得を押し下げる。

企業の設備投資が減って工作機械の発注が減ると、当然、注文を受けるメーカーの売り上げが下がる。住宅メーカーなども同じだ。

3000万借りて家を建てると、住宅メーカーはこのお金を従業員の給料に使用する。一方、貸し出した銀行は3000万を貸し出したとしても、当然、預金者の残高を減らすことはない。預金者のお金を貸すとはいいながらも、残高を減らすことはないので、あたかも銀行が新たにお金を作り出したように見える。これを信用創造という。この信用創造によってあたらに3000万が市場に追加されたことになる。

信用創造を続けると、市場に出回る通貨の量(所得)が増える。トータルとして通貨の量が増えることで、国民全体の所得が押し上げられ、支出が増えて物価が上昇することになる。

マイナス金利は、銀行が日銀に金利を支払うものであり、市場から通貨が引き上げられる効果をもたらす。つまり、信用創造とは逆の通貨量の減少をもたらして、物価を下落させると考えられる。

日銀はマイナス金利によって、銀行に余剰な現金を持たせずに積極的な貸し出しを期待していたと思われるが、結果として貸し出しは増えずに銀行の収益の悪化をもたらした。これは単純に行員の給料が悪くなるだけの愚策だと言える。

銀行の収益が悪化するだけとはいえ、巡り巡って世の中に与えるインパクトは大きいだろう。銀行の収益が悪化した分、通貨量が減り、物価の下落を招き、円高になる。

グダグダと説明してきたが、結局、物価が為替を決定するということだ。アメリカで買えるものが日本ではいくらで買えるのか?そして、アメリカと日本の物価上昇率がそれぞれどのように動くかによって、為替は決定される。今回の日銀のマイナス金利は、各方面の予想に反して物価を押し下げる効果があったということだ。

秋頃に20兆から30兆の大型の財政出動が行われるという予想もあるので、そうなると国内の通貨量が増えて物価上昇が起こる。もしそうなれば、円安になるとここで予想してみよう。結果はおたのしみということで。

イギリスのEU離脱

イギリスが国民投票でEUを離脱することになり、それに伴ってポンドが急落している。円も一時期99円代の円高となり、株価が1200円以上も値下がりするなど、一時リーマンショックを彷彿とさせる事態になったが、10日以上経って落ち着きを取り戻しつつあるようだ。

ポンドが下がるというのは、1ポンド150円から130円のように変動することだ。イギリス製の150円の製品が130円に値下がりするので、外国で良く売れるようになる。しかし、イギリス人にとっては1ポンドで売れていることに変わりはないので、輸出産業にとってはポンドが下がるというのは朗報なのだ。

日本も一時期120円代になったときは、輸出企業は色めきだったことだろう。しかし、再び円高に舞い戻ってしまった。最近ではG7やサミットなどで通貨安競争はお互いにやめよう、という合意がなされている。ある国の製品が安く大量に入って来れば、そのぶん自分のところの製品が売れなくなるからだ。

しかし、今回イギリスは離脱によってポンド安という思わぬボーナスを手にすることになった。マスコミはポンド暴落というセンセーショナルな表現を使っているが、イギリスにとってポンド安は悪い話ではない。

日本でも中国人により爆買があったように、イギリスでもポンド安によって外国人観光客が増えることは十分に考えられる。しかし、その反面輸入にとってはポンド安は厳しいかもしれない。値段は変わらないのにポンドが安くなることによって、輸入製品の価格が上昇することになるからだ。

輸入製品が高くなって一時的に生活が苦しくなるかもしれないが、一方では国内の同種の製品に勝機が見え始める。輸入品に比べて同じくらいか、それよりも安ければ国産を買う人が増えるからだ。こうしたイギリス国内産業の隆盛も考えられる。輸出が伸びて、内需関連の産業が伸びればイギリスにとってはいいことづくめのような気もする。

ここまでは純粋にマクロ経済的な切り口で、政治的な変動は考慮に入れていない。今後EUからどのような形で(関税など)離脱するかに左右される。

世界的に売りたい症候群にかかっていて、どの国も自分のところの製品を売りたがっている。国内では市場が飽和して売れない(と思っている)からだ。その点、イギリスは少し有利な立場にいることは確かだ。

スイスとイギリス

スイスのベーシックインカムにはかなり期待していたが、否決されてしまった。自分がベーシックインカムが欲しいからというわけでなく(くれるならもらうが)、今のような世界的な物価の低さなら、そろそろお金を大盤振る舞いするタイミングだということを言いたかったのだ。

そもそも、物価が低いというのはそれだけ分配が不調であることを意味する。高度経済成長期は企業が国内に投資を行っていたから、大量の借金をしていた。借りたお金で工場を建てたり工作機械を買うと、その受注を受けた企業は従業員に十分な支払いをすることができる。もちろん、テレビや洗濯機といった家電など、今までになかった新しいモノが普及していった時代であり、個人消費も活発だったのだが、それに輪をかけて企業の借金による投資が大きかった。

つまり、人々が手にする給料というのは、個人からの売り上げだけでなく、相当に企業の借金による投資の部分があった。今現在、非正規雇用を中心とした低賃金の蔓延の原因はそこにある。

そういう意味で、20世紀の分配の担い手は企業であったといってもいいかもしれない。分配が好調なら物価は上がる。これは企業だけでなく、政府にも当てはまることで、冒頭のベーシックインカムによせる個人的な期待が大きかったのも、政府による分配が復活する契機になるかもしれないと思ったからだ。

物価というのはそれ自体が重要なのではなく、上昇していることで分配がされているという確認の意味がある。大切なのは分配のほうだ。非正規雇用や老後の破産など経済的困窮にまつわる話はいくらでもある。格差社会などと言われている以上、分配がうまくいっているようには思えない。そして低い物価上昇率とくれば、これは動かぬ証拠と言えるのだ。

スイスは日本と同様に低物価上昇率のマイナス金利国だ。ここでベーシックインカムをキメていれば、相当に他のヨーロッパ諸国に影響を与えることになったかもしれないと思うと残念だ。

イギリスのEU離脱の投票が始まった。イギリス人は難民を問題視しているようで、テロとの絡みもあって理解できる。私個人としては経済的な意味において離脱を奨めたい。

イギリスはEU統合の時にユーロ導入に失敗して、本当はユーロになるはずだったのだができなかったのだ。しかし、それが今では幸いしていると思う。

ユーロとポンドの間には為替レートがあり、もし、ドイツからの輸出攻勢をうけてイギリスの国内産業がやられたとしても、そのうちポンドが安くなってイギリス製品が安く買えるようになる。フランス人もドイツ人も安いならそれに越したことはないわけで、今度はイギリス製品が巻き返しをはかるといったように、通貨が違う2国間というのはバランスをとれるようになっているのだ。おそらく、ポンド安の影響で観光客も増えるだろう。

ポンド安になると輸入物価が上がるので、輸入品の値段が上がることになる。しかし、一方でイギリス国内で生産されるものが安いので、国内の産業が振興することにもなる。

面白くないのはグローバル企業で、イギリスを含めた関税のないEUという巨大な市場を失いたくはない。離脱してしまえば関税を復活させることは明らかだからだ。また、イギリス国内に難民という安い労働力がいるほうが、投資のしがいもある。

ポンド安の影響で世界経済の悪化ばかりが言われるが、実はイギリス人にとっては悪い話ではないのだ。難民をどの程度受け入れるかといったことは、イギリス人自身が決めることだし、雇用もポンド安を利用して輸出企業や観光で確保すればいい。また、輸入物価上昇による国内産業の振興も、賃金の高いネイティブイギリス人にとっては朗報だと言える。

マイナス金利の影響

円高が進行している。イギリスのEU離脱の影響という見方もあるが、本当は日銀が2月から始めたマイナス金利の影響だ。

銀行は預金者から預かったお金を貸し出しに回すのだが、余った分は日本銀行に預けている。マイナス金利というのは、銀行が日銀に預けているお金にかかる金利で、預ければ預けるほど銀行が日銀に対して金利を支払うことになる。

日銀としては銀行が金利を支払うのを避けて、貸し出しが増えることで経済が活気付くと考えたのだろう。実際にはそれほど効果はなく、三菱東京UFJ銀行は国債市場特別参加者の資格を返上するに至っている。

銀行も預金を預かって金利を払い、預かった預金を日銀に預けて金利を支払っていては、何のために銀行業を営んでいるのかわからない。次の銀行決算が見ものだ。

マイナス金利によって日本全体でみると、お金の流れが日銀(政府)に向かっていくことになる。マクロで見れば国内のマネーが減っていることになるので、増税と同じ効果をもたらす。国内のマネーが減れば物価が下がり、外貨と比べた時の相対的な価値は上昇することになる。

一時、住宅ローンなどの貸し出しにもマイナス金利が適用されるかも、といった報道が出たことがあった。このときは猛烈な勢いで円安が進んでいる。これは市場にマネーが供給されるので減税と同じ効果をもたらして、先ほどとは逆に物価上昇を引き起こすからだ。

マイナス金利を量的緩和の延長と考える人も多いが、実は緩和とは真逆の金融引き締めに相当する。おそらく、日銀の中の人もよくわかってないかもしれないが。

そもそも論を言うと、そもそも「国債」などというものは必要ない考える。予算を組むときに必要という意見もあるが、そんなまどろっこしいことをせず通貨発行すればいい。財政規律の問題といっても、要はついていけないほどの物価上昇がなければ済む話なのだ。

 

お金と政府の関係

消費税増税の報道があるたびに、官邸が否定するということが繰り返されている。G7では麻生さんが消費税を必ずあげるような発言があったらしいが、そもそも現在は増税するような経済環境にないことは明らかだ。

増税は嬉々としてやるものではなく、いたしかたなくやるというスタンスが最も正しい在り方だと確信している。それはインフレが酷くてその対策として行われるといった場合などだ。政府の意見としては財政が厳しいから税収を増やすためとのことらしいが、増税をする動機としては誤っている。

そもそも、お金とはなんだろうか。例えばTポイントはお金に近い性質がある。現在は使用できるお店は限られているが、ローソンなどのTポイント加盟店しか利用しない人にとっては、ほぼ現金のようなものかもしれない。しかし、そのような人は少数派であり、色々な店の色々なポイントカードが発行されているので、財布のカードが煩わしいというのが個人的な印象だ。

しかし、このTポイントが日本全国あらゆるお店で利用できるとしたらどうだろうか。公共料金や新聞代といった日常の支出の全てがTポイントで支払い可能だとしたら、第二の通貨となるかもしれない。

Tポイントの仕組みは、アーケード街などの商店がスタンプなどを発行して、集めたら500円分の買い物ができるといった取り組みと同じものだ。加盟している全ての店がその500円分の割引を負担して、加盟店全体として顧客を囲い込む。全国的にポイントが普及すれば、そのうち給料の一部やボーナスなどはTポイントで支払う店がでてくるかもしれない。そうなると、第二の通貨として流通しそうな気もする。

しかし、決してそうはならない。なぜならば、どんなに疑似通貨が発展したとしても、税金だけは円に変わって支払うことはできないからだ。

日本政府がTポイントでの納税を認めたら、Tポイントを発行する会社は、自ら作り出したポイントで税金を納められることになる。これは実質的に税金を全額免除していることに等しい。気が向いたときにポイントを発行して納税できるのであれば、こんなに素晴らしいことはない。Tポイントでの納税を認めるということは、通貨発行を一企業に認めたことになる。

現金の偽造がかなり重い罪に問われることを考えれば、通貨発行権というのがいかに大きな権限であるかわかるだろう。現金ではないにせよ、納税までできるポイントを発行するということは、政府が通貨と認めたということであり、円と寸分違わない通貨が誕生したということでもある。

つまり、お金がお金たり得るのは、政府がお金と認める(納税できる)ということに他ならない。一万円札がお金として流通できるのは、みんながお金には価値があると思っているから、といったようなあやふやな理由ではなく、納税可能であるということからきている。

極論を言えば牛乳のフタで税金を納める法律が国会で通れば、牛乳のフタがお金になる。もちろん、明治乳業や小岩井は勝手に牛乳のフタを作ることは違法になるだろう。

冒頭の消費税増税が通貨発行権のある政府にとっていかにナンセンスなものかは、今までの話を理解できればお分かりだろう。通貨を発行できれば意地悪く国民を締め上げるような真似は必要ない。気をつけなければいけないのは放漫財政によるインフレだけだ。

増税を認めるとしたらインフレ対策としての場合だけだ。

ドルペッグの危険な橋

「サウジ」「中国」通貨急落で「国際通貨危機」勃発か

http://www.jiji.com/jc/foresight?p=foresight_16701

サウジアラビアや中国はそれぞれリヤルと元という独自の通貨を発行している。これらの通貨は為替レートをUSドルに固定して変動起きないようにしている。ドル円のように変動が起きると貿易や投資などのリスクになるので、固定することで海外からの投資を呼び込みやすくしているのだ。こういった為替相場を固定することをドルペッグという。

投資を呼び込むというのは例えばユニクロが世界中に展開するように、店舗や工場を建ててその国で経済活動を行うことだ。日本にもスターバックスやアメリカンファミリーといった外資系企業が沢山ある。外資系企業はその国の人を雇うために雇用対策になり、企業も市場を獲得できるとあって、多くの発展途上国は外資系企業がくることを望んでいる。

反面、独自の産業を育成するインセンティブが削がれるため、企業が撤退すると雇用は失われて産業もなくなってしまう。また、技術やノウハウなどのソフト面での成長が促されないため、いつまでたっても外国企業の下請け的な立場から脱することができない。

ホンハイがシャープを買収しようとしたのは、独自のものづくりを行いたいという思いがあったからだろう。ホンハイはアップルなどメーカーの下請けとして製造を行っている。2015年の売り上げは16兆円で、トヨタ自動車が27兆円なのでその規模の大きさを伺うことができる。これだけの大企業であっても自社ブランドを持たないので、シャープを買収して技術を手に入れたいという思いは人一倍あったにちがいない。金があっても技術はなかなか育たないのだ。

ドルペッグするときは中央銀行が為替介入を行う。サウジアラビアの場合は石油を輸出しているので、売り上げはドルで受け取っている。もし、ドル高リヤル安なったら輸出で獲得したドルをリヤルに両替することでリヤル安を防ぎ、ドル安リヤル高になりそうになったら所有しているリヤルをドルに交換することでバランスをとる。

リヤルをドルに交換するときは中央銀行がリヤルを発行する権利をもっているので問題ないのだが、問題はドルをリヤルにしてリヤル安を防ぐときだ。いくらでも発行できるリヤルと違って、外貨であるドルには限りがある。

今回、原油が7割も下がってしまったので、サウジアラビアはドルの外貨を大きく減らした。サウジアラビアは生活用品など多くのものを輸入に頼っているので、稼ぎのもとである原油がこけてしまうと命綱である輸入ができなくなる。

サウジのように輸出にたよって日用品の多くを輸入に頼る経済モデルや、外資系企業の進出によって国内の雇用や需要を満たすにはドルペッグさせるのが手っ取り早い。手っ取り早いが、そのぶん脆弱な経済になる。原油も供給過剰になれば今回のように値段がさがるし、代替エネルギーがでてくる可能性もある。また、外資系企業を誘致したとしても、いつ撤退するかもしれないし、撤退しないとしても永遠の下請けであり続ける。

なるべく日常的に使うものくらいは、「自分たちの手」で「国内」で生産するというのが理想だろう。

スイスの試み

今年の6月にスイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われる。

http://www.businessnewsline.com/news/201602011233520000.html

今回国民投票が行われるのは、国民一人当たり毎月2500フラン(約30万円)の支給が受けられるようにする是非を問うものだ。

スイスはユーロに加盟しておらず、独自に発行するスイスフランを使用している。ベーシックインカムで毎月国民に支給するには通貨発行権が不可欠であり、その点スイスには実施可能な政策だ。

税収によってベーシックインカムを運用することは、不可能とは言わないまでも高所得者の超人的な忍耐が必要になる。その点、通貨発行権がある独自通貨を持つ国であれば、新たな発行によってまかなうことができる。

スイスの主な産業はロレックスなどに代表される時計といった精密機械や金融だ。共に非常に利益率が高く、スイスは貿易黒字国となっている。また、そのためにスイスフラン高で皮肉にも輸出企業は苦労しているようだ。

物価が低いところも日本と共通しており、これは需要不足を示している。つまり、所得が不足するために、供給に対して支出が少ない状態にある。この部分も日本と同じ構造であり、先進国の中では突出して物価が高いとは言われるものの、今現在はデフレに突入している。スイスの国債金利はマイナスである。

ベーシックインカムを導入するには、

1、自国通貨

2、経常収支が一定(赤字であっても膨らんでいないなければOK)

3、低いインフレ率

の3点を満たす必要があると考えている。スイスはこの三つの要件を満たしている。断っておくとこの要件は筆者独自の基準であり、経済学の教科書などには載っていない。

働かずに所得を得るなどということは、従来の価値観からすると受け入れがたいという人もいるだろう。しかし、自分の力で生きていける人などほんの一握りであり、その一握りですら一人の力で生きているわけではない。無人島に放り出されようものなら、億万長者であってもそう長くは生きられないだろう。無人島で金は無意味だからだ。

金持ちが一人逃げしても無意味だからこそベーシックインカム(再分配)だということになる。

ベーシックインカムを導入したからといって、国民が全員仕事を辞めてしまったらこの制度は成り立たなくなる。そこが難しいところだ。買い手ばかりになって売り手がいなければ、たちまちインフレになる。

アンケートによるとベーシックインカム導入で仕事を辞めると答えた人は、8%程度らしいので、実運用になってもうまくいくことは十分に考えられる。

日本はベーシックインカムどころか消費税を上げようとしているので、国民投票で通ればスイスが一足先にデフレ脱却することになるだろう。

なぜ経済成長が必要なのか。

経済的な豊かさのみが幸福をもたらすわけではないということは、だれしも感じているところだろう。しかし、熱病のように経済成長の必要性を説くのはなぜだろうか。

一説によると銀行などの利子の存在が経済成長を必要としていて、いわば資本主義という車を回し続けなければクラッシュしてしまうということらしい。

仮に日本に1000兆円の預金があったとする。0.1%の利子がつくとすると1年後には1oo1兆円存在していなければならない。確かに利子の存在は際限のない現金の膨張を予感させる。しかし、利子返済のための借金をすれば必ずしも実体経済を経由させる必要はない。つまり、経済成長なしでも金利による通貨の膨張は起こってくるということだ。

個人でも多重債務で破産する人がいるように、金融機関が貸してくれさえすれば借り換えによって利子を返済すれば経済成長は必要ないことになる。政府は毎年、借り入れによる国債の利払いを行っている。

また、元本を返済してしまったらこの話は成り立たなくなる。バブルが崩壊すると金融収縮が起きる。金融収縮というのは借金返済だ。信用創造で膨らんだ部分がしぼんでしまうので、1000兆円あったものが900兆円になることもありうる。実際にバブルが崩壊すると、むしろ中央銀行の思い切った緩和で通貨の量は増えることのほうが多いが。

利子によってお金が一方通行で増え続けるというわけでもないし、利子返済のために必ずしも経済成長が必要というわけでもない。

では、なぜ経済成長が必要なのだろうか。

例えば1個100円のものが10個売れたとする。次の年に11個売れれば売り上げは100円伸びて経済成長したことになる。もう一つのパターンとして個数は10個で変わりはないのだが、値段が110円になって売り上げが伸びることがある。

実際には同じものが10個しか売れてないので、正味の豊かさは変わらないのに、物価が上がったせいで経済成長しているように見える。

実はこの物価上昇型の経済成長が日本を含めた先進国には必要なのだ。

毎年売れる数が増えていく経済成長は貧しい国には必要だが、日本などの先進国にはさほど必要ない。もちろん、技術の進歩などによる新しい産業などは歓迎するべきだが、それだけで成長を持続するのは不可能だ。技術を開発するスピードよりも普及するスピードのほうが早い。

物価の上昇は所得の水準に比例する。1960年代の大卒の初任給が16115円(◆参考資料:物価の文化史事典(展望社)で、散髪代が200〜300円なので今の1/10くらいだろうか。散髪代が安いがその分給料も安い。

このことから所得の水準が物価を決めると考えられる。リフレ派は金融緩和だけで物価が上昇するという意見だが、個々の財布の中まで貨幣がはいってこそ物価は上昇すると考える。つまり、物価が上昇するということは経済成長をもたらし、所得が増えていることを意味する。

まず、所得が決まって次にそれに応じる形で物価が決まるのだ。

しかし、物価によって企業収益が決まり、従業員の給料が決まるという見方もできる。物価がなんらかの理由で先に決まっていて、給料はその影響を受けるという考え方だ。

サラリーマンの所得は企業収益に左右されるが、年金生活者や公務員給料などは政府の加減によって決めることができる。また、税制によって所得を左右することも可能だ。政府の支出や税制によって国民の所得は決めることができる。

最初のなぜ経済成長が必要かという答えは、政府による分配が十分に行われていれば物価上昇をもたらす。物価上昇が起きれば経済が成長するというものだ。経済成長自体が目的ではなく、国民がお金の心配をせずに豊かな暮らしができていれば物価上昇に表れてくる。

中国経済に求められるもの

人民元が下落して中国政府の通貨防衛が続いている。世界の工場と言われて安い人件費で生産できるので、通貨の下落というのは輸出にとっては追い風のはずだ。かつてはアメリカからの再三の通貨切り上げ要求があったりしたのだが、状況は真逆になってしまった。

通貨が下がるということは輸出には有利だが輸入には不利になる。中国政府は輸入物価上昇を抑えるために通貨防衛をしている。鉄鋼といった輸出向けの産業には過剰とも言える投資を行ってきたが、内需関連の投資を疎かにしてきたと想像される。

特に環境に対する配慮なさに象徴されるように、人民の生活向上といった視点が欠けていた。共産党の戦略だと世界の資源を買い占めて、原材料を安く調達しつつ、輸出向け製品を生産することで外貨が獲得できる。外貨が獲得できれば必要なものは輸入すれば済む話で、必要なものはそのつどコンビニにでも行く感覚で海外から買えばいい。そんなふうに思っていたのだろう。

人民軽視の経済政策の結果、内需が弱い経済体質になってしまった。一応、不動産関連の投資も行っていたようだが、作って終わりという限りなく消費に近い投資だったと評価せざるを得ない。意味のある投資というのは、生活や生産性の向上に繋がるものを指す。宅地開発を進めてそこで生活する人がいれば第二、第三のビジネスも始まるが、現実には新築のゴーストタウンができただけだった。

その場限りの内需振興もさることながら、輸出産業にしてもハリボテ感は否めない。冒頭に世界の工場という言い方をした。つまり、生産拠点であって、生産物の設計図はアメリカや日本が持っていて、独自にものを作る力は先進国にはおよばない。人民元高になって中国の人件費の割安感がなくなれば、アメリカや日本企業はベトナムやミャンマーに生産拠点を移すことを考えるだろう。

頼みの綱である貿易収支は2015年は対前年で-7.0%らしいので、外資の中国離れが予想される。外国企業が中国に投資をしないということは、それだけ雇用も失われるし外貨獲得のチャンスも作り出せなくなる。つまり、中国という国家ごとの失業という様相を呈してくることになる。

中身のない内需振興と、設計図を持たない外国企業のための生産拠点という2点に共通するのは、何も考えていないとうことだ。その結果、人民元の水準は輸入するには安すぎるし、輸出するには高すぎるということになった。

中国に必要なのはまず環境悪化の防止だろう。国内の富裕層は海外に逃げつつあるので、それを食い止める必要がある。その上で国内のインフラや教育投資をして地道に国内の産業振興に勤める他はないと考える。とはいってもやはり一番の問題は政治的だが。


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効率的な経済

2020年の東京オリンピックに向けて政府のタクシーの自動運転化の目標を始め、様々な産業のロボット化が進んでいる。介護の現場での入浴を補助するロボットや、着込むタイプのパワードスーツといったものまで開発されているらしい。

しかし、一方でそうした自動化による失業といった心配の声もあるのも事実だ。スーパーのレジなどでもセルフ化が進んでおり、その心配は現実のものとなりつつある。安倍政権が掲げる1億総活躍社会とは逆の方向に進んでいる感もある。

経営者としては人件費といったコストを削減して利益を求めるのは真っ当なことだが、国全体としてみたときに何がおこるのだろうか。

日本の人口は1億2千万人で約その半分が労働人口だ。つまり6千万人が働いていることになる。もし、ロボットやITによって今と同じ生産物が1千万人程度で可能になるとしたら5千万人は職を失うことになる。少し極端な例だが現実にならないとは限らない。スーパーコンピューターの進歩でシンギュラリティがくるのが2045年というから、そう遠い話でもない。シンギュラリティというのは特異点といわれるもので、コンピューターの強力な計算力によって、様々な科学技術的な問題が一挙に解決するというものだ。その頃には衣食住といった基本的な生活物資は、労働なしで手に入れられるという。

本当にそんなことになるかはわからないが、今以上に生産活動に人の手がかからなくなるのは間違いないだろう。ロボットを所有する金持ち(企業)と、何ももたない失業者が大量に発生するのは想像に難くない。ポイントは1千万人しか働いていないのに、今と同じだけの生産が可能になっているという所だ。

過剰に生産された財やサービスが余り、一方では所得がない人が貧困に陥いる。9割の人は生産に携わることもなければ消費することもなく、経済活動からはじき出される格好になる。

しかし、冷静に考えると全員分の財やサービスは生産可能であるのに、9割が貧困に陥っているというのもおかしな状況だ。働いていない人が貧しいというのはもっともらしいがそもそも雇用がないのだ。こうなると自給自足でもするほかはない。家庭菜園で延命をはかるくらいの抵抗は起こってくるだろうが、働いても貧しい現実は変わらないということになる。

効率を追求した経済の行き着く先は、大勢の貧困という皮肉な現実らしい。

個人や企業の資産の所有を認めているのは国だ。国が資産の所有を認めているからこそ、貯金が他人に奪われることなく生活ができる。また、持ち家を持つことができる。なので、所得に応じて税金の負担が増えていく累進課税といった税制は、この所有権の部分的な否定ということになる。

国家といった共同体の本質は共同の体であるということだ。共同の体であるはずであるが、経済的にはそれを否定するような方向に向かっている。所有権は国家が認めたものであり、その国家権力を超えてグローバル企業が跋扈するのは矛盾というほかない。


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