老後が不安でも、財政再建はやってはいけない

2017年10月29日 マクロ経済, 政治, 社会

選挙が終わるやいなや、たばこ税の増税や所得税控除の引き下げのニュースが出てきています。また、自民党の公約である、2019年の消費増税による教育無償化などが現実のものとなってきました。テレビや新聞では、財政再建待ったなしの論調で溢れています。政府の財政赤字が地方を合わせて1200兆円を超えているわけですから、通常の感覚なら、少しでも減らすべきだと考えることでしょう。

税収は毎年50兆円そこそこですから、そこからやりくりして10兆円ずつ返したとしても120年はかかるわけです。また、その間には利子も発生するので、実際に返済する額はもっと多くなります。消費税を上げてでも借金を返済すべき、という論が出てくるのも仕方ないと思います。

でも、実はこれって返す必要がない借金なのです。一般的に借金というと必ず返すもの、という思い込みがあります。それはあくまで個人の話であって、企業や政府には当てはまりません。

返さなくていい借金

借金は返すものという思い込みが誰しもあります。私もそうでした。でも、これは個人の場合限定なのです。お金を貸す人の立場になって考えるとわかりますが、貸す側の人は利子を稼ぐために貸すわけです。利子がもらい続けられれば、いつまででも借りてもらいたいし、もし返済されたら新たな借り手を探すでしょう。

もちろん、必要になったときはかえしてもらうわけですが、いつでもすぐに返してもらえるなら、貸しっぱなしでも困ることはありません。

個人に貸す場合は寿命がありますので、死ぬまでに返せる額ということになります。もし、不死身の人がいれば、サラリーマンでも10億くらい借りられるのではないでしょうか。

これが企業や政府になると、ある意味不死身となり、特に政府は永続性が顕著ですので、途方もない額の借り入れも可能になります。もちろん、個々の借金には期限があり、返済は行われますが、返済するお金も借金によって行われます。なので、表面上はいつまでたっても、借金の総額は減らないのです。これは個人なら多重債務になって、即破産への道のりです。

企業は成長するにつれて、借金が多くなる傾向があります。トヨタ自動車は創業以来借金が増え続けて、現在では19兆円の借金があります。政府や大企業の負債というのは増えることはあっても、減ることはまれなのです。

外国との比較

安部政権はプライマリーバランスの黒字化を2020年に予定していました。つまり、支出と収入のバランスを黒字化して、借金返済を始めるのが2020年ということです。

下のグラフは日本の財政赤字を示しています。


世界経済のネタ帳さんからお借りしました。

キレイに借金が膨らんでいます。予定では2020年からこのグラフが右肩下がりになるということです。ここで少し他の国と比較してみたいと思います。G20の先進国と比べてみましょう。ざっと眺めるだけで結構です。



















すべて世界経済のネタ帳さんからお借りしました。世界経済のネタ帳さん最高!

あれ?と思いませんか?サウジアラビアを除いてほぼ全て右肩上がりになっています。これは、G20が特殊なのではなく、世界中の国のほとんどで、財政赤字は増えているのです。

世界的に見ると、財政赤字は増えるのが普通であり、減っているところは例外といえるでしょう。歴史的にも建国以来、財政赤字が減っている国はほとんどありません。

安倍さんはこれを2020年から右肩下がりにしようとしているわけですから、どれほど異様なことかご理解いただけるのではないでしょうか。

社会保障費はどこからでるか

今後、長期的な社会保障はどのように負担されるべきでしょうか?

これは、結論からいうと公債、つまり借金によって捻出されるというのが答えになります。G20の政府債務残高からもわかるように、多くの国が公債によって行政を維持しています。

これを将来世代へのツケの先送りという言い方をすることもありますが、政府に貸しているお金はもともと国民のお金です。私たちの祖先も政府にお金を貸していますが、未だに返済はされていません。銀行や生命保険に預けている私たちのお金も、政府に貸し付けられています。おそらく、私たちの子孫も私たちと同じように銀行預金を通じてお金を政府に貸すはずです。

政府は借りたお金によって社会保障や公共事業といった必要な支出を行います。病院やなどに支払われた政府が支出したお金は、紆余曲折を経て再び私たちの預貯金になります。つまり、私たちから借りたお金が政府によって使われて、再び私たちの所へ帰ってくるということを延々続けているのです。

政府の財政赤字を増やしながら私たちの資産を形成していくというこの方法は、歴史的、世界的な標準であり、借金というだけで恐れる必要はありません。むしろ、これは持続可能なシステムであり、将来にわたって私たちの社会保障を維持していくでしょう。

その影響として、物価の上昇が起こります。今、100円位するアイスも、昔は10円で売られていました。昭和のモノの値段が安かったのは、マネーの量がそれだけ変わったことを示しています。今後も物価が上がり続けて、政府債務残高も増えて、私たちの社会保障を維持していくことが理想です。

しかし、現在は世界的な低物価です。つまり、それだけ世界中の政府支出や社会保障の削減といった、弱者を切り捨てる方向に行っていることを示しています。

まとめ

政府の財政赤字は増えるのが普通であり、老後のために財政再建をするのは、ナンセンスというほかありません。G20を見ても財政再建と言っている国など日本くらいのものです。

基本的に行政コストは公債から支出して維持していき、財政赤字は増えていくものです。その結果、物価の上昇が起きます。翻って、政府がきちんと社会保障などの手当てを行っているかを物価をみることで判断できるということです。

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