二種類の貧困

貧困には二種類ある。ひとつは買おうにも店に物がなくて手に入らない、戦後型の貧困であり、もうひとつは店に物があるけどお金がなくて買えないといった、今現在日本が突入しようとしているタイプの貧困だ。

前者の戦後型の貧困は国内の生産設備や技術が貧弱で、需要に追いついていないことに原因がある。「お菓子なども買おうにも店になかった」というのが戦後を経験した父の口癖で、いってみればみんな貧しかった。自然と海外からの輸入に頼ることになり円安を招きやすい。

例えばアメリカのチョコレートを輸入すると日本人は円で購入するが、チョコメーカーはそれをドルに交換してアメリカに持ち帰る。円が売られてドルが買われるので円安ドル高になるのだ。日本からも何か輸出していればお互いに打ち消しあって均衡をたもつことになるが、輸入か輸出のどちらかが慢性的に多いと為替も偏った方向に流れていく。

輸入ばかりを続けると円安になり、同じチョコレートを輸入するにしても徐々に価格が上がることになる。いわゆる悪性のインフレだ。モノがない上に頼みの綱の輸入品も高いとなると本当に生活は苦しいものになる。発展途上国の多くはこのタイプの不況にあえいでいる。必要なのは国内の生産力を上げることであり、自分のところでチョコレートを作れるようになることだ。そのための投資が必要であり、チョコ作りの技術教育も必要になる。

今の日本が直面しているのは店にモノはあるが、財布の中身が貧しくて買えない貧困だ。これは生産性には何の問題もなく、むしろ供給力が強すぎることで陥る不況と言える。企業は売る気満々だがお客さんがあまりいない状態だ。そうなると従業員もあまり必要なくなり、非正規の安い人材に置き換えられていく。2015年現在、労働者の4割が非正規ということなので、それだけ安い賃金で働く人が以前より増えたということになる。

安い賃金で働く人が高い買い物ができるはずもなく、良いお客さんにはなり得ない。客がいなければ企業は更なるリストラを行うといった悪循環がでてくることになる。これが今現在の日本を覆う貧困の概要だと考えられる。

いろいろなモノがありすぎてもう欲しいモノはないから売れない、というのはもっともらしいが、その理屈でいくと日本には貧困はないことになる。非正規が増えてきて日本にうっすらとした貧困があるよね、というのが問題だったはずだ。モノがありすぎて欲しいモノがない人もいるが、そうではない人もいるといった状態だ。

戦後の物不足型の貧困は供給を手当てすることで解決できた。つまり、企業努力で乗り越えることができるタイプの貧困だった。社員教育や投資をして生産能力を上げればいいからだ。

今の日本の物過剰型の貧困は企業だけの力ではどうにもできない。生産性向上は企業努力で解消できるが、過剰な生産をリストラなどの企業努力で抑え込むとかえってお客さんを失ってしまう。

この状況を見て一般的な反応は、輸出を伸ばそうという方向に行っているように見える。国内の過剰な供給を海外に向けようということらしい。最近は外国人観光客の爆買いが歓迎されている。企業の売り上げがあがれば非正規雇用の賃金も上げられるからだ。しかし、さっきも指摘したように日本でモノが売れないわけではない。問題は所得の低い人が多くなりすぎたことだ。

ここから先はひとつの提案になる。解決策はこれだけではないので、一例として読んでいただきたい。それは政府が国民にお金を配ればるということだ。子ども手当のような形でいい。非正規雇用の人を対象に非正規雇用手当てのようなものでもいいかもしれない。そうすればその人たちがお客さんとなっていろんなものを買ってくれるだろう。

財源は高所得者への課税かもしくは新たにお金を発行することでまかなう。間違っても消費税ではない。消費税をとって非正規手当てを配っては、ただの行って来いになってしまう。高額所得者(企業)への課税は政治的に難しいと考える。現状では法人税減税は既定路線になっており、これを覆すのは難しいだろう。覆すことができればそれがいいのだが。

あとはお金を新たに発行して国民に配る政策だ。ポンポンと配ってもいいのだが、ある程度の根拠は必要だと思うので、国民年金の増額か社会保障の充実などがいいのではないだろうか。特に年金の掛け金の減額や医療費の自己負担の軽減などはすぐにでもやるべきだと考える。あとは消費税の廃止を行えば、国民へのお金の流れは勢いのあるものになることが期待できる。

一般的な感覚の人ならお金をポンポン配ることに抵抗があると想像する。しかし、このブログのメインテーマである「お金の本質」を考えればけして怪しい発想ではないということがご理解いただけると思う。あわせてなぜ、紙のお金に価値があるのか?も読んでいただきたい。


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