名目GDPと実質GDPの違い

物価上昇率を加味しているかどうか

名目GDPは実際に調査を行って求める額面上のGDPです。名目GDPと実質GDPの違いは物価上昇率を加味しているかどうかです。名目GDPと実質GDPの関係は以下のようになります。

名目GDP ÷ 物価上昇率 = 実質GDP

実質GDPは名目GDPと物価上昇率から計算上求められる数字です。名目GDPが5%成長したとしても、物価上昇率も5%上昇していたなら、実質的には何も変化していないということになります。もし、名目GDPが5%成長して、物価上昇率に変化がないなら、実質的に5%成長したことになります。実質GDPが5%成長したということは、売り上げが5%増加したということを意味します。

経済成長を考える場合は、どれだけ数が売れたかを考える必要があるので、実質GDPを計算によって求めるのです。

GDPの計算の仕方

例えば、70万円の部品を仕入れて、150万円の自動車を生産したとしたら、80万円の付加価値が発生します。

150万円(売上)ー 70万円(仕入れ)= 80万円(付加価値)

この80万円の付加価値がGDPに計算される部分になります。自動車が1年間で10万台売れたとすると、

80万円 × 10万台 = 800億円

800億円のGDPが計上されることになります。

仮に国内で自動車とバイクだけを生産しているとします。50万円のバイクの部品の仕入れに20万円かかるとして、2万台を売り上げたとします。

50万円(売上) ー 20万円(仕入れ)= 30万円(付加価値)

30万円 × 2万台 =60億円

自動車とバイクを合わせて860億円のGDPが計上されることになります。

GDPデフレーターの計算の仕方

GDPデフレーターというのは物価上昇率のひとつです。新聞などには物価として消費者物価指数などがよく出てきますが、名目GDPから実質GDPを求めるときにはGDPデフレーターを使います。

実際にGDPデフレーターを計算してみたいと思います。物価上昇率という場合、以前の物価との比較して上昇か下落を判断する必要がありますので、5年前との比較を行います。少しややこしいので、読み飛ばして結果の数字だけ見てもらっても構いません。

注意する点としては今年も5年前も今年の販売台数を使用するところです。

現在 1台あたりの付加価値 売れた台数 付加価値
80万円 10万台 800億円
バイク 30万円 2万台 60億円
合計860億円
5年前
65万円 10万台 650億円
バイク 25万円 2万台 50億円
合計700億円

860億円 ÷ 700億円 = 1.229

5年前を基準としたとき、約22.9%の物価上昇が起こったことになります。GDPデフレーターが1を上回るとインフレ、下回るとデフレになります。

実質GDPの計算の仕方

名目GDPと物価上昇率(GDPデフレーター)は準備できましたので冒頭の式に当てはめてみます。

860億円 ÷ 1.229 = 700億円

となり、700億円が実質GDPということになります。5年前の物価の水準で見た場合に、700億円の生産がされたことになります。注意していただきたいのは、5年前と比較するときに、今の実質GDPと5年前の名目GDPを比較する必要があるということろです。今の実質GDPと5年前の実質GDPを比較しても意味がありません。

名目GDP 実質GDP
2007年 650億円 610億円
2012年 700億円 650億円
2017年 860億円 700億円

上の表では2012年の実質GDPは2007年をもとに計算しています。一見すると経済成長しているように見えますが、実は物価上昇をしているだけです。2012年の実質GDPと2007年の名目GDPを比較すると同じ650億円になっています。つまり、2007年から2017年の売上げ台数は同じになります。実質GDPが上昇しているので売り上げ数も上がっているように見えますが、今の実質GDPと基準となる年の名目GDPを比較する必要があるのです。

まとめ

・実質GDPは物価上昇を除いた量的な経済成長をみるためにある。
・実質GDPを見るときは、基準年の名目と比較する必要がある。

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