希望の党の公約はなぜダメなのか

ユリノミクスの中身は?

衆議院選挙が10月22日に行われます。新たに小池東京都知事を代表とする希望の党が結成され、旧民進党から多くの議員が移籍するなど、政局が慌ただしくなっています。ただ、こういったときこそ政党の訴える政策を冷静に考えるべきです。希望の党は9の公約と12のゼロという政策を打ち上げており、総体としては小さな政府を目指しているということが言えます。

ただ、小さな政府を目指しているのであって、小さな政府ではないということを断っておきたいと思います。

「徹底した規制改革と特区を最大活用し、民間の活力を生かした経済活性化を図ります。」
「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間の活力を引き出す「ユリノミクス」を断行する。」希望の党HP抜粋

小さな政府では政府はなるべく市場に口出しするのは控えて、民間企業の自由な経済活動を見守るという立場をとります。そのため、財政出動に過度に依存しないということが公約に掲げられているわけです。

ただ、希望の党の推進が推進しようとする小さな政府には矛盾点があります。2019年10月に10%引き上げが予定されている消費税ですが、小さな政府なら引き下げるか廃止の方向に行かざるを得ないからです。

財政出動を削減して、同時に減税をするというのが小さな政府のパッケージになります。共産党や社民党といった大きな政府を志向する政党なら、拡張的な財政出動を行いつつ増税となります。現状では消費増税は凍結するという煮え切らない態度をとっていますので、選挙の結果次第では増税に舵をきることは十分に考えられます。

アベユリでは庶民は置き去りに

もし自民党や希望の党のような緊縮的な財政政策をとりながら、かつ、増税という矛盾した政策をとる政党が政権を取った場合は、デフレが継続することになります。つまり、景気がいい景気がいいといわれながらも、庶民にはさっぱり美味しい部分が回ってこない経済ということです。

緊縮的な財政政策をとりながら増税しますので、当然といえば当然な結果です。こういった矛盾した政策をとるのには理由があります。

すべては財政再建のために

自民党も希望の党も小さい政府を志向していながら、なぜ増税という矛盾した税制を行うかというと財政再建のためです。中央と地方を合わせた公的債務は1200兆円を超えており、将来へのツケは減らさなければならないといわれています。

ただ、財政赤字が膨らんでいるのは日本だけではありません。アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツなどすべて財政赤字は拡大しています。

アメリカ

カナダ

オーストラリア

ドイツ

そして日本

世界経済のネタ帳さんからお借りしました

先進国に限らず、発展途上国でも同様の傾向がみられます。すべての国は建国以来、右肩上がりに政府の債務は増え続けるものなのです。自然現象といってもいいでしょう。しかし、日本は2020年までにプライマリバランスをプラスにして、このグラフを右肩下がりにしようとしています。

財政支出を削減しながら増税をするのは国民を打ちのめすだけの政治であり、小さい政府でもなんでもありません。財政再建はやってはいけないのです。世界には200近くの国がありますが、政府債務が右肩下がりになっているところなどひとつもありません。それくらい財政赤字を削減するというのは尋常でない政策ということになります。

ベーシックインカムの甘いささやき

希望の党はベーシックインカムの議論も進めると公約にあります。国民全員(1億2千万人)一人当たり毎月5万円といった給付を行うものを、ベーシックインカムといいます。希望の党の基本路線はあくまで小さな政府ですので、ベーシックインカムを実施するとしたら、その分、既存の社会保障が削減されることが予想されます。

おそらく、ベーシックインカムを実施後の政府支出は、今よりもコンパクトなものになるでしょう。極論を言うと、医療費や国民年金といった社会保障はすべて廃止されてベーシックインカムでどうにかしようね、ということです。若くて健康なら良いでしょうが、高齢で病気がちの人にはきつい制度です。

本来、社会保障というのは、弱った人のためのものですので、そもそもといったところで疑問のある制度ではあります。むしろ、ベーシックインカムを導入するよりは、消費税を廃止するほうがすっきりするのではないでしょうか。

ベーシックインカムは全員一律ですので、制度管理などが簡略化されるのでコストがかからないというメリットがあります。しかし、政府全体の支出は削減の方向に行くのは間違いないので、やはり病気などの不測の事態に陥った時にどうするのか?が問われると考えられます。

客寄せパンダの12のゼロ

待機児童ゼロやブラック企業ゼロなど12のゼロの部分は一つ一つの政策に反対する人はほぼいないでしょう。花粉症ゼロや満員電車ゼロなどどうやって実現するのか???なものもあります。問題はいかにしてこの12のゼロを達成するか、という方法が明記されていないところです。

12のゼロ

原発ゼロ
隠ぺいゼロ
企業団体献金ゼロ
待機児童ゼロ
受動喫煙ゼロ
満員電車ゼロ
ペット殺処分ゼロ
フードロスゼロ
ブラック企業ゼロ
花粉症ゼロ
移動困難者ゼロ
電柱ゼロ

やはりここでも基本となるのは、財政に頼らずにどれだけできるのか?というところです。小さい政府を目指す以上は余計な支出は控えなければいけません。電柱ゼロを実行するのにはお金がかかるわけですが、ベーシックインカム同様、増税かほかの予算を削って実施することになるでしょう。どこかにしわ寄せがくるわけです。

希望の党とは

経済政策に関して言えば、希望の党は小さな政府のふりをした、国民いじめの党になる可能性があるといえます。これは現政権である自民党も同様です。財政再建にこだわって緊縮財政 + 増税というありえない政策を打ち出す以上、そう評価せざるを得ません。財政再建という発想をやめない限り、日本がデフレから脱却して、みんなが経済的な豊かさを感じることのできる社会は、絶対に来ないでしょう。

希望の党の経済政策上は以上のようなことが言えるわけです。他にも見るべきポイントはありますので、総合的に判断して投票していただきたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA