GDPとは何か?

GDPというのは、経済的な豊かさを国家間で比較するために考えられた指標です。

途上国には毎朝、子供が1時間もかけて川に水を汲みに行くような国があります。汲んできた水は水瓶にいれておいて、料理や洗濯を行います。料理をするにも薪を拾ってきてかまどで煮炊きを行いますし、洗濯も手作業です。

日本では上水道が整備されているため、川に水を汲みに行くことはありませんし、全自動洗濯機で洗濯しながらIHで調理するので火を起こす手間もありません。これは上水道設備や家電の有無といった、経済的な格差があるために起こることです。

明らかに日本のほうが経済的に豊かであるのですが、どのくらい豊かであるのか数字で比較するために考えられた指標がGDPです。 GDPは主に国家間の経済規模の比較に用いられ、GDPが大きければそれだけ経済的に豊かであるといえます。

GDPはGross Domestic Productの略で日本語で国内総生産といいます。1年間にある国の中で(Domestic)でどれだけの製品(Product)が生産されたのか?ということです。以下は2020年の世界のGDPトップ5です。

1位アメリカ20,932
2位中国14,722
3位日本5,048
4位ドイツ3,803
5位イギリス2,710
単位:10億USドル (世界経済のネタ帳より)

アメリカが世界一の経済大国であると言われるのは、GDPが世界一であるためです。2020年は20.9兆ドルもの財やサービスを生産しました。

生産面のGDP

日常生活を営む上で私たちは水道ガス電気といったインフラや、食べるものや着るものといった様々なモノやサービスを利用しています。それらは誰かが働くことによって生み出された生産物です。

言い換えればGDPはどれだけ質の良いモノやサービスを必要かつ十分に生産できるか?ということです。

例えば

40円で原材料を仕入れて10円の電気代をかけて加工し、100円で販売したとすると利益が50円になります。この50円は労働に対する対価であり、付加価値と呼ばれます。

100円(販売)-40円(原料)-10円(電気代)=50円(付加価値)

日本国内で1年間に生産された利益(付加価値)の合計がGDPです。日本国内で生産されたものであれば、外国籍の方であってもカウントされます。逆に日本人であっても、海外で働いた人の付加価値は日本のGDPにはカウントされません。

50円というのは、原材料を加工することによって生まれた付加価値です。 人が働くことによって価値ある製品(付加価値)が生産されます。付加価値の50円は従業員の給料や役員報酬、次の原材料を買うための資金になります。製品を作るためには設備が必要ですし、作るためのノウハウや熟練の技術なども必要になるでしょう。日本では多くの製品やサービスを購入することができますが、生産するための設備があり、生産できるだけのノウハウや教育を受けた人がそれだけいるということです。付加価値をたくさん生産できる国は経済的に豊かであると言えます。

原料や電気代や家賃などをまとめて中間生産物といいます。 生産過程で投入された材料などのコストのことを指します。

先ほどの例で言うなら、原料と電気代が中間生産物になります。原料や電気も生産の結果ですのでそれ自体に付加価値があり、GDPに加算されます。

付加価値を付けるには労働が不可欠

原材料や仕入れた製品に対して付加価値を付けるには、技術を伴った労働が不可欠になります。

私たちがお金を出しても欲しいものというのは、技術をもった誰かが働いた結果が欲しいということです。小麦粉や砂糖などの材料ではなく、一流のパティシエが作ったケーキが欲しいということですね。

美味しいケーキを作るにも知識や技術が必要で、結構大変なのです。

シリコンだけあっても、半導体を製造する技術がなければICなどの精密機器は作れません。

日本が経済大国と言われるのは、多くの付加価値を生産するための技術や知識をもった人が大勢いるためです。

日本の生産状況

2018年(1月~12月)の日本のGDPは約547兆円で、下の表は産業別の割合を表しています。製造業が20.8%と突出しており、日本で最も付加価値を作り出している産業であることがわかります。

製造業20.8%
卸売・小売業13.7%
不動産業11.4%
専門・科学技術、業務支援サービス業7.6%
保健衛生・社会事業7.2%
建設業5.7%
運輸・郵便業5.2%
公務5.0%
情報通信業5.0%
金融・保険業4.2%
その他のサービス業4.2%
教育3.6%
電気・ガス・水道・廃棄物処理業2.6%
宿泊・飲食サービス業2.5%
農林水産業1.2%
鉱業0.1%
合計100.0%
内閣府 国民経済計算より

支出面のGDP

生産されたモノやサービスは購入されますので、支出面からもGDPを見ることができます。

ケース

A社は材料を木から切りだして加工し、B社に70円で製品を販売して、B社は色を塗ってお客さんに150円で販売したとします。

A社:70円(販売)-0円(原料)=70円(付加価値)

B社:150円(販売)-70円(原料)=80円(付加価値)

A社とB社の生産した付加価値は合計で150円になります。一方でお客さんが支払ったのは150円ですので、生産した付加価値の合計と一致することになります。つまり、以下のことが言えます。

生産面のGDP=お客さんの支払い

生産面のGDPと支出面のGDPは等しい

同じものを違った角度から見ているだけですので、生産面と支出面のGDPは一致します。仮にA社とB社の財務を見なくても、一番最後のお客さんが購入した製品の価格から、いくらの付加価値が生産されたかを計算することが可能です。

支出面のGDPは最後の買い手がいくら払ったかだけに着目しますので、最終消費支出という言い方をします。 支出面のGDPは以下の式で表されます。

支出面のGDP=家計の支出 + 企業の支出 + 政府の支出 + 純輸出(輸出-輸入)

家計、企業、政府の支出に加えて純輸出を加算します。輸出のほうが多ければGDPにプラスに作用し、 輸入のほうが多ければGDPにマイナスに作用します。

支出の状況

内閣府が年4回発表するGDP統計は速報性が要求されますので、集計のやりやすい支出面のGDPに着目して発表しています。以下は2018年(1~12月)のGDPです。 輸出と輸入は拮抗しており、純輸出は1.3兆円になっています。

支出項目国内総生産(支出)
民間最終消費支出304.4兆円
民間住宅16.4兆円
民間企業設備87.5兆円
民間在庫変動1.1兆円
政府最終消費支出108.3兆円
公的固定資本形成28.0兆円
公的在庫変動0.1兆円
純輸出1.3兆円
国内総生産547.1兆円
内閣府 国民経済計算より
在庫の問題

生産面と支出面は一致すると言いましたが、これは理屈の上での話で、実際には売れ残りが発生します。 そこを調整するのが在庫調整の項目で、売れ残ったものは企業が自身で買ったと見なします。

この項目が大きくなると、GDPは成長してるけど実際には在庫が膨らんでいるだけで、生活が豊かになったわけでないと判断できます。

分配面のGDP

生産された付加価値は家計、企業、政府に分配されます。 これを分配面のGDPといいます。

分配面のGDP = 家計の所得 + 企業の所得 + 政府の所得(税収)

三面等価の原則

分配面のGDPも、生産面のGDPと支出面のGDPと一致するという原則があります。

生産面のGDP = 支出面のGDP = 分配面のGDP

2018年の分配面のGDPは下の表になります。

経済主体国内総生産(分配)
家計(個人企業を含む)341.2兆円
非金融法人企業132.1兆円
一般政府61.3兆円
金融機関11.1兆円
対家計民間非営利団体2.3兆円
合計548.0兆円
内閣府 国民経済計算より

政府の所得は消費税や関税、印紙税が主なものになります。 この後、金利や株の配当のやりとりが行われて、所得税や法人税、社会保険料の支払いが行われます。

給与明細でいうなら、支給総額に近いイメージです。対家計民間非営利団体というのは、労働組合、政党、宗教団体等のほかに、私立学校などを指します。

生産活動を行うと設備が傷んできます。これを固定資本減耗といいます。 所得を各経済主体で分けましたが、特に大量の生産設備を持つ企業などは、所得から固定資本減耗分を差し引いて計算します。 生産設備を買い替えたとしても、それは私達の生活が豊かになったわけではないからです。

以下の表は所得税、法人税、社会保険の支払いや年金の受取を行った後、固定資本減耗を差し引いた可処分所得です。 給料でいうなら手取りに近いイメージです。

経済主体国民純所得(NNI)
家計(個人企業を含む)309.6兆円
非金融法人企業19.6兆円
一般政府98.5兆円
金融機関5.6兆円
対家計民間非営利団体9.2兆円
合計442.5兆円