2000年代前半に小泉総理大臣が言っていた「構造改革なくして経済成長なし」という台詞を覚えていらっしゃるでしょうか。
構造改革とは具体的にどういうことを指すのでしょう。もともとはイタリア共産党の政治家が発言したのが始まりらしいのですが、日本で言われる構造改革は当時のものとは意味を変えて使われています。
現在の自民公明連立与党が行っている構造改革というのは、自由貿易、規制緩和、民営化の三つに分けることができます。
一般的に輸入品には関税がかけられて、国内の同一の製品に比べて割高になる傾向があります。関税には国内の産業を保護する目的がありますが、この関税を無くしてお互いに貿易を推進するのが自由貿易です。
食品の安全性に関する基準や医薬品の規制など、関税ではないけど国内の法律によって、輸入規制されているものもあります。これを非関税障壁といいます。そういった国内の非関税障壁を緩和してより貿易の拡大を図ろうとするのがTPPです。
2つ目の規制緩和は国内の様々な規制を緩和するということです。TPPの非関税障壁とも繋がる話ですが、電力の新規参入を行えるように法律を改正するなど、企業がより市場参入しやすい環境をつくりだして、企業のビジネスチャンスを増やすことができます。
また、国家戦略特区では地域限定で規制や税制を改革し、その効果を調べています。この国家戦略特区には,全国で6地域が指定されており、福岡市もそのひとつです。
天神や博多駅などの空港に近いエリアにおいては,航空機の安全な離着陸のために,航空法によって,建てられる建物の高さに制限がかかっています。従来76mの高さだったのを115mまで緩和して民間企業を呼び込もうとしています。
特区で試験的にその効果を確認して、結果次第では日本全体に拡大していきます。
最後に民営化です。郵便局や道路公団の民営化など、国や自治体が行っている事業を民営企業が行うことです。規制緩和と民営化は市場に参入する企業が増えることで消費者は選択肢が広がって、市場が活性化するねらいがあります。
構造改革というのは民間できることは民間にまかせて政府はできる限り経済活動に参加しないということが言えます。よく言われる小さい政府を目指すというのが構造改革ということです。
これはアベノミクスの第三の矢の成長戦略にもなっています。
自由貿易でより多くの財やサービスが日本国内に輸入されれば、国内産業のバランスをとるのが難しくなります。安いからといって食料をすべて輸入に頼るのは、もしものときに食料が手に入らなくなったり、安全性のリスクがありますので、どこまで市場を開放するかは加減が難しいという問題があります。
適度な競争は進歩をもたらしますが、過剰な競争は企業に負担を強いることになり、無理なコストの圧縮やそれに伴う事故なども問題視されています。2016年に軽井沢スキーバスの事故により16人が亡くなる事故がありました。バス事業参入への規制緩和の影響や、人手不足による高齢者の深夜運転などが原因ではないかとも言われています。