経済のニュースは株価に始まり、債権、金利、失業率、為替、経常収支、消費者物価など多岐にわたる。
しかも、日本だけでなく世界中の国がそれぞれに政治と経済活動があるため、一つ一つをつぶさに見るのは専門家でもない限りかなり難しい。
そこで私が普段やっている経済の見方を紹介したい。断っておくと、私は普通のサラリーマンであり、専門家でも何でもない。
我流の見方なので、からあげ流経済の見方とでもいったらいいだろうか。
経済を考えるときには一般的には景気の良し悪しを基準に判断する。景気がいいというのは順調に経済成長しているということだ。
ただ、経済成長はしていても庶民はその恩恵は受けられないという現象も見受けられる。
2002年からリーマンショック前までの日本の好景気は、昭和40年代に起こった戦後最長のいざなぎ景気よりも長かった。しかし、実感としてそれほど景気が良かったという印象はない。
私が考える経済活動のゴールは、みんなが豊かに暮らすということだ。特定の企業が最高益を出すことではなく、また経済成長をすることでもない。これらはあくまでツールであって、目的ではないのだ。
みんなが豊かに暮らすには、分配に着目する必要がある。
私が見るポイントは以下の4点になる。
1,分配
2,物価上昇率
3,税金
4,構造改革,公共投資
分配は給料や年金といった、定期的に入ってくる所得や、健康保険などの社会保障のことだ。分配が十分であれば、少なくとも経済的には豊かな暮らしができる。2002年からの好景気に実感がなかったのは、給料やボーナスが上がらなかったためだ。
経済活動の最終的な目的が分配である以上、ゴールは分配がどの程度行われたかで評価する必要がある。
ただし、どの程度の分配が適切であるかは、様々な要素が含まれるため一概には言えない。
毎月いくらもらえば幸せか?という質問に答えるのが難しいのと同じだろう。
しかし、まともな生活や十分な医療を受けられないのであれば、給与や年金額が低すぎると考えられる。
つまり、生産されたモノやサービスの量と、分配のバランスによって物価は決まってくる。
物価上昇率が高い場合は、発展途上国のように国全体でモノやサービスの量が不足していることが考えられる。
南米にはキューバをはじめ、社会主義的な政治を行う国が多い。社会主義国は労働は適度に、給料は多めにという傾向がある。ブラジルは国労働組合が強いので分配は強く、生産設備に対する投資が不足していることもあってインフレになりやすい。
オリンピックの施設の建設が間に合わなかったのは、こうした建物の供給能力が弱いことに起因している。
この状態で分配を増やしたとしても、更なる物価の上昇が起きるだけで実質的には豊かにならない。
慢性的にモノが不足して、物価上昇率が高い場合は、増税を行って通貨量を下げる必要がある。同時に構造改革と公共投資を行って、生産力を上げなければならない。通貨の量を減らしつつ、モノの量を増やすことでインフレを抑えていくのだ。選挙のときには構造改革や痛みを伴う増税を訴えている政党に入れるといい。
分配が少なくて物価上昇率が低い場合は、政府は年金を引き上げたり企業は賃上げを行いつつ、通貨の量を増やすために減税を行う。モノやサービスの量は十分にあるので、通貨の量を増やして分配することでみんなが豊かに暮らすことができる。
現状、日本は物価上昇率は低く、非正規雇用拡大による貧困が問題になっているので、選挙のときには減税と賃金引き上げを訴えている政党を選ぶといい。
構造改革に厳密な定義があるわけではないが、おおまかに規制緩和、自由貿易、国営企業の民営化などがあげあれる。生産性を向上させてモノやサービスの絶対量を増やすのが構造改革だと思ってもらっていいだろう。織田信長が楽市楽座をつくって城下町を繁栄させたイメージだろうか。
関所を廃止して自由に人の行き来ができるようにして、規制緩和することで誰もが商売ができる環境を整える。そうすることで、モノやサービスを増やしたのだ。
公共投資も道路やエネルギー、通信インフラといった経済基盤を整備することで生産力を高めることができる。特に、途上国はこの社会資本整備が不十分で経済発展ができないところが多く、国内に独自の技術をもつ国は少ない。日本のゼネコンなどに発注せざるを得ないわけだが、そのためには外貨(円、ドル)をもっているか、もしくは自国通貨を円に交換しなければならず、通貨が安いところは更に通貨安を招くことになる。
過剰な通貨安は輸入物価を押し上げるために、なかなか将来の投資のために明日の生活を犠牲にすることも
できない、というのが途上国の現実だ。なので円借款など日本の海外投資が歓迎されている。
日本もかつて新幹線を作ったときは、世界銀行からお金を借りているので、開発援助は途上国にとっては経済発展のためには欠かせないものだ。
まず、分配が十分であれば、それ以上の分析は必要ない。あとは、孫子の代までそういった社会を引き継いでいけるように考えるだけだ。
給料や年金が少なくて生活が苦しいときは、物価上昇率からベースアップや年金の引き上げが可能か判断する。
もし、物価上昇率が高ければモノが不足しているということなので、増税と生産力を上げる公共投資や規制緩和が必要になる。
つまり、お金の増殖を抑えつつモノやサービスの絶対量を増やす政策をとる。
物価上昇率が低ければモノやサービスは十分にあるので、減税と労組合活動を活発にやって賃上げを行うことになる。
庶民の生活が苦しければいくら株が上がったり、経済成長しても意味がない。まずは目的である分配に着目することで、ブレない経済観測が可能になると考えている。