トランプが大統領選を制したことで、連日テレビや新聞の報道が続いています。トランプは就任直後の1月20日にTPPを離脱すると宣言しています。TPPは本来アメリカが言い出したものですが、なぜトランプはTPPを離脱するのでしょうか。
トランプはペンシルベニア州のゲティスバーグで、アメリカの有権者との契約として就任100日プランを発表しました。これは口約束ではなく、文書でネットで公開されており、契約書のようにトランプのサインが入っています。ビジネスマンらしい演出ですね。
トランプが大統領になるにあたって、もっとも重視するのは雇用、移民、健康保険の3つだと言われています。
不法な移民を制限することでアメリカ人の雇用を守り、2500万人の雇用を創出すると約束しています。雇用を守ることはトランプにとって大切な政治課題なのです。
「make America great again」
(アメリカを再び偉大な国にしよう)
この言葉が象徴するようにアメリカを再起させようとしています。そのために一番重要なのは国民の生活であり、雇用だと考えています。
アメリカ、カナダ、メキシコで結ばれている北米貿易協定(NAFTA)の見直しを始め、TPPもアメリカの雇用を脅かすものとして離脱を表明しました。
TPPはオーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国及びベトナムの12カ国が参加する自由貿易協定です。
下の表は参加する12ヵ国の経済規模を大きい順に並べたものです。数字は2015年のGDP(USドル)になります。
億USドル | |
アメリカ | 180367 |
日本 | 44779 |
カナダ | 14738 |
オーストラリア | 12063 |
メキシコ | 8786 |
シンガポール | 2819 |
マレーシア | 2617 |
チリ | 2310 |
ベトナム | 1828 |
ペルー | 1754 |
ニュージーランド | 1733 |
ブルネイ | 123 |
メキシコより下はちょっと経済規模が小さすぎて、メリットもデメリットもないというのがアメリカの本音でしょう。しかし、ベトナムはよくアメリカと戦争をしたと思います。
メキシコとカナダは北米自由貿易協定(NAFTA)にも加盟していますので、アメリカにとっては目新しくありません。やはり、アメリカにとって本命は日本ということになります。
ただ、80年代の日本の自動車の輸出攻勢はアメリカにとってはトラウマになっています。アメリカの自動車産業を潰したのは他でもない日本製の自動車だからです。
同じ条件で貿易した場合にアメリカは雇用を守れる自信がありません。特にアメリカの労働者は危機を感じているので、TPPに反対するトランプに投票したと言われています。
TPP離脱を保護主義として批判する向きもありますが、自国民の雇用や生活を守るのも大統領の大切な仕事です。国内経済よりも世界経済を優先するべきであるとは誰も言えないでしょう。
大統領に就任するのが1月20日ですので、就任して即日離脱というのが選挙での公約でしたが、本当にできるかどうかはわかりません。財務長官にゴールドマンサックスやJPモルガンのCEOとっいったウォール街の中心にいた人を据えるという話もあります。
本来、ウォール街を批判することで勝ち上がってきたわけですから、この人選は少し疑問があります。また、インフラへの投資の資金を拠出するために投資銀行を設立するという話もあります。もともとはヒラリーが提言していたもので、そのときはトランプは批判をしていました。
選挙戦とその後では政策の軌道修正が行われることも考えられるので、TPPも注視していく必要がありそうです。
【訂正】2016年11月24日
TPP加盟国のGDPの表に誤りがありましたので訂正しました。全ての数字を精査し直しました。