黒田日銀総裁が就任して3年半が経ちました。その間、一貫して2%の物価上昇率の達成を約束してきましたが、とうとう自分の任期の間は達成できない見通しとなりました。
あらためて、黒田日銀が行った量的緩和とは何かを振り返ってみましょう。
物価を上げるためには、消費や投資といった支出が必要となります。消費や投資が盛んということはイコール好景気であり、支出が増えればに物価が上がることになります。つまり、黒田総裁は景気を良くしたかった、ということです。そのためには、銀行にお金が大量にあれば、企業や個人が借りて投資するので好景気になると考えました。
銀行は国の債権である国債を大量に持っています。預金者から預かったお金を、国に貸し出して運用するためです。債権は元本が保証されているので、安全に運用をすることができます。その国債を日銀が買い取りました。これが量的緩和と言われるものです。
銀行は国債を手放して現金を入手します。このことによって、企業に貸し出す資金が銀行に準備されたわけです。日銀が国債を買い取るために支払ったお金は税金ではありません。日銀が新規に発行した通貨です。量的緩和には300兆円近いお金が使われており、今後も年間80兆円くらいのペースで国債を買い取っていく予定です。
楽しそうに印刷していますね。ここまでは上手くいきましたが、銀行から先に貸出しが拡大しなければ意味がありません。
理想としては全部貸し出せば企業は投資に回すので景気拡大と物価上昇が見込まれます。
しかし、現実にはこのようにほとんど投資にはまわらず、銀行の手元に残ってしまいました。
緩和をしたものの、お金は市場には十分にまわりませんでした。お金の貸し借りは、貸す側と借りる側の両方の意見が一致しなければ成立しません。通常、企業は仕事が忙しくなると人を増やしたり、事務所を大きくしたり投資を行います。いくら銀行が貸すからといっても仕事がない以上、投資はしないわけです。また、銀行にしても借りてくれるなら誰でもいいわけではありません。確実に返してくれる人を選ぶ必要があります。
このような理由から量的緩和は失敗ということになりました。